比較生理生化学
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総説
インドネシアメダカにおける装飾的な性的二型の多様性とその進化
安齋 賢
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2023 年 40 巻 2 号 p. 105-112

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抄録

性的二型とは,同種の雌雄間で異なる表現型を示す多型現象であリ,様々な分類群で幅広く観察される一方,その表現型自体は多様である。性的二型の進化には,性淘汰と呼ばれる異性をめぐる競争によって生じる淘汰プロセスが重要な役割を果たすことが知られている。しかしながら,性的二型の多様化を担う原因遺伝子の実体が同定された例は少なく,新たな形質の発現に性差が形成される詳細な遺伝機構や新規アリルが集団中に広まるプロセスなど,その詳細な進化遺伝機構には不明な点が多い。我々は,様々な形質で顕著に多様化した性的二型を示し,かつフィールド調査から実験室レベルでの検証までを一貫して行うことが可能なモデルとしてインドネシア・スラウェシのメダカ科魚類固有種群に着目し,その解明に取り組んでいる。本稿では,主に固有種群の1種であるウォウォラエメダカのオス特異的に発現する胸鰭の赤色婚姻色に関する実際の解析例を紹介し,現状明らかになった点と今後の課題について議論する。併せて,幅広い研究分野への活用を期待し,比較生物学モデルとしてのメダカ科魚類の利点も紹介したい。

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© 2023 日本比較生理生化学会
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