比較生理生化学
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40 巻, 2 号
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総説
  • 長谷部 政治
    原稿種別: 総説
    2023 年 40 巻 2 号 p. 88-96
    発行日: 2023/08/09
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー

    温帯地域では季節の移り変わりによって外部環境が劇的に変化する。このような四季が存在する地域の生物の多くは1日の日長変化から季節を読み取り,生理状態や行動を適切に調節している。体内で約24時間周期のリズムを刻む体内時計である概日時計が,この日長測定に重要な役割を果たしていると考えられている。一方で,情報処理の中枢である脳神経回路内で,概日時計に基づいた日長情報がどのような神経シグナルを介して伝達され,細胞レベルでどのような日長応答を起こしているのかは長年不明であった。著者らの研究グループは,明瞭な日長応答を示すカメムシなどの野外採集昆虫を用いて,細胞レベルでの生理学的解析とRNA干渉法による遺伝子発現操作解析を組み合わせることで,この概日時計に基づいた日長情報の神経処理機構の解明に取り組んできた。本稿ではまず,概日時計に基づいた日長測定機構のこれまでの研究の歴史について紹介する。続いて,近年著者らが生殖機能に明瞭な日長応答を示すホソヘリカメムシを用いて明らかにした,日長情報を伝達する神経シグナルとそれを受け取った生殖制御細胞での日長応答について紹介したい。

  • 福富 又三郎
    原稿種別: 総説
    2023 年 40 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 2023/08/09
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー

    受け取った感覚刺激が自分由来なのか外界由来なのかを区別することは,すべての動物にとって不可欠である。随伴発射は内的な運動予測信号であり,感覚情報処理を調節することで,その区別に重要な役割をもつ。電気パルスを発してコミュニケーションや電気定位を行うモルミルス科弱電気魚を用いた研究は,とりわけ随伴発射の神経メカニズムの理解に重要な貢献をしてきた。本稿では,随伴発射の概念の発見から,電気コミュニケーション,受動的電気定位,能動的電気定位における異なる随伴発射の役割とメカニズム,さらに随伴発射の進化について,比較的最近の知見を含めて解説する。

  • 安齋 賢
    原稿種別: 総説
    2023 年 40 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2023/08/09
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー

    性的二型とは,同種の雌雄間で異なる表現型を示す多型現象であリ,様々な分類群で幅広く観察される一方,その表現型自体は多様である。性的二型の進化には,性淘汰と呼ばれる異性をめぐる競争によって生じる淘汰プロセスが重要な役割を果たすことが知られている。しかしながら,性的二型の多様化を担う原因遺伝子の実体が同定された例は少なく,新たな形質の発現に性差が形成される詳細な遺伝機構や新規アリルが集団中に広まるプロセスなど,その詳細な進化遺伝機構には不明な点が多い。我々は,様々な形質で顕著に多様化した性的二型を示し,かつフィールド調査から実験室レベルでの検証までを一貫して行うことが可能なモデルとしてインドネシア・スラウェシのメダカ科魚類固有種群に着目し,その解明に取り組んでいる。本稿では,主に固有種群の1種であるウォウォラエメダカのオス特異的に発現する胸鰭の赤色婚姻色に関する実際の解析例を紹介し,現状明らかになった点と今後の課題について議論する。併せて,幅広い研究分野への活用を期待し,比較生物学モデルとしてのメダカ科魚類の利点も紹介したい。

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