2023 年 40 巻 2 号 p. 97-104
受け取った感覚刺激が自分由来なのか外界由来なのかを区別することは,すべての動物にとって不可欠である。随伴発射は内的な運動予測信号であり,感覚情報処理を調節することで,その区別に重要な役割をもつ。電気パルスを発してコミュニケーションや電気定位を行うモルミルス科弱電気魚を用いた研究は,とりわけ随伴発射の神経メカニズムの理解に重要な貢献をしてきた。本稿では,随伴発射の概念の発見から,電気コミュニケーション,受動的電気定位,能動的電気定位における異なる随伴発射の役割とメカニズム,さらに随伴発射の進化について,比較的最近の知見を含めて解説する。