抄録
北上山地の森林植生の成立を,近世から近代における土地利用という人為撹乱との関係を踏まえて考察した。現在の二次林をその種構成により分類すると,それらは過去の土地利用形態に明瞭に対応して分かれた。それぞれのタイプの二次林を構成する種の特性には一定の傾向があり,それらは,それぞれの場所の土地利用から推測される過去の撹乱体制下での生存に,有利な働きを持つように考えられた。その典型例は,ウダイカンバとシラカンバという二種の同属種に見ることができ,両者の景観スケールでの分布の違いは,それぞれの寿命や結実開始齢といった種特性と,場所により異なる人為撹乱様式との相互作用により説明される。植生の成立に強い影響を示した土地利用の分布は,一方で,その場の立地や自然環境により規定されていた。したがって,現在の北上山地の二次林植生は,従来重視されてきた立地からの直接的な影響のみならず,立地が規定する土地利用あるいは撹乱様式を経由した,間接的な影響も考慮に入れて理解する必要があるだろう。このような立地と土地利用による撹乱体制の変化は,北日本における太平洋側と日本海側の植生の背腹性にも,一定の影響を与えているものと考えられる。