抄録
粟津湖底遺跡の縄文時代早期(9500年前前後)自然流路内堆積物から得られた木材化石は組織解剖学的に落葉広葉樹の12分類群に同定された。木材化石群はコナラ属コナラ節幹・枝材の最優占,およびわずかなコナラ節とイヌエンジュ根材の産出で特徴づけられる。木材化石群の樹種構成と産状は,遺跡とその周辺にコナラ節を主要素としイヌエンジュやヤナギ属・モクレン属・ニガキ・モチノキ属・クリなど数種からなる温帯性の落葉広葉樹林が成立していたことを示す。このことは遺跡とその周辺の森林植生は植物食糧資源としてのブナ科堅果類に富んでいたことを示唆する。