抄録
屋久島は6300年前の鬼界カルデラの噴火で噴出した幸屋火砕流によって植生が大きな影響を受けたとされているが,花之江河湿原とその周辺で行われた過去の花粉分析ではそれを示唆するような結果は得られていなかった。本研究ではスギ自然林を通る林道脇の露頭に見いだされた火砕流堆積物の上に発達した埋没土壌の花粉分析を行い,火砕流噴火後の植生の回復過程を示すと考えられる3つの異なる花粉組成を得た。即ち,1)イネ科花粉とシダ胞子が圧倒的に優占する遷移初期の草原植生を示す組成,2)イネ科とシダの優占は変わらないものの,草本,木本ともに種数が多く特に草本ではアリノトウグサが,木本ではヤマモモが目立ち,先駆樹種が定着を始めた状態を示す組成,3)スギやヤマグルマなど木本花粉が優占し,現在の周辺植生に対応するものの,現在の森林では希な種や,より標高の低いところに分布する種を多く含む組成である。1)の堆積物の年代は5170~6300y、BPの間であると推定され,噴火後早い時期に埋没した土壌であると考えられた。