人と自然
Online ISSN : 2185-4513
Print ISSN : 0918-1725
ISSN-L : 0918-1725
中国山地東部の福知川上流に分布する福知泥炭層の堆積年代と成因(予報)
ジャーナル フリー

2010 年 21 巻 p. 109-119

詳細
抄録
本研究では, 宍粟市一宮町白口付近の福知川河床に露出する泥炭・有機質粘土層を福知泥炭層と呼び, その堆積年代と堆積環境および成因について以ドの点を明らかにした。 1) 福知泥炭層は,ATやSUk起源の火山ガラスを含むが,K-Ah起源の火山ガラスを含んでおらず, 約2万年前から約7,300年前までの時代の堆積物であると推定される. 2)本泥炭層は9,140~9,435cal BPに堆積を開始し,8,457~8,638cal BP以降も堆積を続けていた. この間の平均堆積速度は7~16mm/ 年と大きい。 3)この平均堆積速度が続いていたとすると, 福知泥炭層の最上部の年代は8,070~8,470cal BPとなる。 4)9,140~9,435cal BPに発生した地すべりが福知川を堰きとめ, 白口地区に最大幅200m, 長さ500m程度の天然ダム湖が形成された. この湖底に堆積した地層は, 湖水の排水後に河川の運搬した砂礫層に覆われていたが, 平成21年夏の豪雨により上位の砂礫層が洗掘されて露出した. これが福知泥炭層である. 5) 地すべりの発生原因として, 山崎断層帯の活動による大地震か, 集中豪雨が想定されるが, 発生頻度の高さから後者の可能性がより高いと考えられる. 中国山地東部においては, これまでに大型植物遺体を含有する完新世初頭の堆積物の報告は無い. 今後は福知泥炭層に含まれる植物遺体の同定や花粉分析を進めることで, 中国山地東部の山間渓谷における完新世初頭の古植生について新たな知見を得ていきたい. 本泥炭層の堆積した8,000~9,500年前は, 約9,300~9,500年前の寒冷化を挟みつつも, 完新世の温暖化が急速に進んで約8,000年前のヒプシサーマルへと至る時代である(小泉,2007) . 堆積速度の大きな福知泥炭層は, このような完新世初期の気候変動について時間解像度の高いデータを提供できる. さらに福知川流域は口本海式気候区と瀬戸内式気候区との境界付近に位置することから, グローバルな気温変動とともに日本海南部の海況変動(小泉・坂本,2009) の影響を敏感に受け, 夏季や冬季の降水量が変動してきたと考えられる. こうした変動についても,福知泥炭層から高精度の研究成果が得られることが期待される.
© 2010 兵庫県立人と自然の博物館
前の記事 次の記事
feedback
Top