2016 年 27 巻 p. 89-101
瀬戸内海国立公園六甲山地区における六甲山中央部では,山上のリゾート開発や薪炭林利用が途絶えたことに加え,国立公園編入以降にともなう木竹の伐採規制が重なり,放置山林化が進んでいる.そのような状況の中,市民団体「六甲山を活用する会」が放置山林の整備と子どものための環境学習林づくりを目指して,4 期7 年にわたって繁茂するアセビのみを伐採し,樹木の生育状況や実生の発生状況の調査に取り組んだ.まず,調査地域において毎木調査を実施し,アセビの生育状況や樹齢,調査区間での樹種構成を把握した.その後,調査地域1,700 ㎡においてアセビを510 本伐採した.その結果,山林環境は明るく様変わりし,林内の照度に顕著な変化がみられた.また,実生の発生状況を3 年間継続調査した結果,草本類も含めた多様な樹種の実生を確認することができた.これらの市民活動を通じて,子どもが森の中で安心して動き回り,植物や生きものの多様性も観察できる“ まちっ子の森”が誕生することとなった.