抄録
20世紀前半頃の中国において,人文・社会科学や自然科学の知識・情報の爆発的
増加に伴い,新しい概念を表す新造語が大量に発生した。本論は,その頃の中国語
の語彙近代化,語彙拡充の現象について,生態言語学の視点から考察を行う。まず,
中国語の新語を取り巻く言語生態とその環境因子の枠組みを構築した上で,新語の
選択と淘汰のメカニズムを司る基本原理「適者生存の原理」を導入する。そして,
環境因子の中の「宗教活動」「コンプレックス」「同義語衝突・同音衝突」「書記形
態・漢字」という 4 つの事例に対する分析を通して,新語が直面する熾烈な生存競
争の実態と環境因子が新語の発生と生存に与えた影響を明らかにする。