歴史言語学
Online ISSN : 2758-6065
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初期近代英語における語彙借用
日英対照言語史的視点から
堀田 隆一
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2023 年 12 巻 p. 129-142

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抄録

初期近代英語期(1500–1700年)は英国ルネサンスの時代を含み,同時代特有の 古典語への傾倒に伴い,ラテン語やギリシア語からの借用語が大量に英語に流れ込ん だ。一方,同時代の近隣ヴァナキュラー言語であるフランス語,イタリア語,スペ イン語,ポルトガル語などからの語彙の借用も盛んだった。これらの借用語は,元 言語から直接英語に入ってきたものもあれば,他言語,典型的にはフランス語を窓 口として,間接的に英語に入ってきたものも多い。さらには,借用要素を自前で組 み合わせて造語することもしばしば行なわれた。つまり,初期近代英語における語 彙の近代化・拡充は,様々な経路・方法を通じて複合的に実現されてきたのである。 このような初期近代英語期の語彙事情は,実のところ,いくつかの点において明治 期の日本語の語彙事情と類似している。本論では,英語と日本語について対照言語 史的な視点を取りつつ,語彙の近代化の方法と帰結について議論する。

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© 2023 日本歴史言語学会
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