抄録
本研究ではモモ(Prunus persica)2 品種‘Daewol’と‘黄ららのきわみ’の新梢における耐寒性,炭水化物含量および β-アミラーゼ遺伝子発現を調査した.寒冷順化期間中(2011 年 9 月~11 月),電解質漏出分析によって評価した品種の耐寒性は顕著に増加した.両品種ともに耐寒性が最も強まったのは,2011 年 12 月下旬であった.脱寒冷順化期間中(2012 年 1 月下旬~4 月)では,両品種の耐寒性は徐々に低下した.50%障害発生温度(LT50)の結果から,2012年 1 月下旬からの脱寒冷順化期間において,‘Daewol’と‘黄ららのきわみ’の耐寒性に顕著な差があった.両品種ともに全糖含量,ショ糖および β-アミラーゼ遺伝子発現と耐寒性に関連が認められた.最も含量の多いソルビトールは,両品種ともに耐寒性と関連がなかった.2012 年 1 月と 2 月では,耐寒性のより強い‘Daewol’のブドウ糖および果糖含量は,‘黄ららのきわみ’より約 2 倍高かった.これらの結果は,モモ品種の耐寒性の差異は脱寒冷順化期間中のショ糖からブドウ糖および果糖への転化が関係することを示唆している.