2015 年 84 巻 2 号 p. 161-171
マリーゴールド‘ナライイエロー’,‘バリゴールド’,‘コロンブスオレンジ’の 3 品種について,高温ストレス環境下におけるグリシンベタイン(GB)の効果を検討した.15 日間の昼温/ 夜温:25°C/25°C(対照区)または 39°C/29°C(高温ストレス区)の条件に晒す 24 時間前に,3 品種の実生に対して GB を葉面散布した.25°C/25°C(対照区)で生育させた植物に対して,全ての品種において高温ストレスは光阻害並びに低レベルの二酸化炭素の取り込み率(A)を誘因し,また,気孔コンダクタンス(gs),蒸散率(E)に対して低い値を示した.活性酸素分子種(ROS),脂質過酸化反応および細胞死についても対照区と比較して高温ストレス区のほうが高くなった.しかし,相対水量(RWC)については,‘バリゴールド’についてのみ統計的に有意な差が認められた.すべての品種に対して GB の 0.5 mM および 1 mM の葉面散布は,高温ストレスの光阻害を緩和し,結果として,より高い二酸化炭素の取り込み率(A),気孔コンダクタンス(gs)および蒸散率(E)を与えた.GB の使用はまた,より低い過酸化水素,超酸化物,脂質過酸化反応および細胞死を示した.相対水量(RWC)に対する GB の改善効果は‘バリゴールド’についてのみ有意であった.ほとんどの場合において,GB の 0.5 mM および 1 mM の濃度間に有意差は認められなかった.各パラメーターにおける GB の効果と品種間における低減反応から,マリーゴールドのすべての品種に対して GB は際立った効果を示すことが考えられる.以上の結果,マリーゴールドの高温ストレスに対して GB を使用することにより,緩やかにその効果を発揮できることが示された.