The Horticulture Journal
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原著論文
葉緑体 DNA によるギボウシ属の園芸品種の起源
李 尚龍牧 雅之
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2015 年 84 巻 4 号 p. 350-354

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抄録
ギボウシ属植物は,古くから園芸植物として国内外で広く栽培されてきている.ギボウシ属の分化の中心は日本であり,現在流通している園芸品種の多くは,国内の野生集団から選抜されてきた可能性が高い.我々は,葉緑体 DNA の遺伝子間領域における塩基配列を,ギボウシ属の 31 園芸品種について決定し,それらが起源した集団について明らかにすることを試みた.すでにコバギボウシとオオバギボウシについては,国内の分布範囲全域にわたってハプロタイプの地理的分布が明らかとなっているので,今回はこれら 2 種に由来すると考えられる園芸品種を対象として,解析を行った.その結果,園芸品種の葉緑体 DNA ハプロタイプの多くは,野生集団が持つハプロタイプと同一であることから,これらの園芸品種は国内の複数の野生集団に起源を持ち,選抜・改良されてきた可能性が示唆された.一方で,いくつかの園芸品種では,野生集団に見られたハプロタイプとは異なるものも見られた.このようなハプロタイプでも,野生集団のハプロタイプとほとんど違いはなかったので,これらのハプロタイプを持つ品種は先行研究で対象とされなかった集団から由来するか,あるいは,栽培化されてから突然変異によって生じた可能性がある.
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© 2015 The Japanese Society for Horticultural Science (JSHS), All rights reserved.
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