2016 年 85 巻 2 号 p. 161-168
スイートピー花弁において可溶性糖質用陽イオン交換カラムを用いた HPLC により未同定物質が検出された.この化合物を 1H-NMR, 13C-NMR, CI-MS および ESIMS を用いた解析により 2-シアノエチルイソキサゾリン-5-オン(2-CEIX)と同定した.2-CEIX は花弁,葉および茎に含まれていた.これらの器官におけるアミノ酸と他の窒素化合物の含量を 2-CEIX のそれと比較した.花弁ではアスパラギンの含量が最も多く,2-CEIX がこれに次いだ.また,茎と葉では 2-CEIX が最も多く含まれていた.花弁において 2-CEIX 含量は開花に伴い次第に減少した.一方,花弁と花弁以外の花器官において,2-CEIX 含量はスクロース処理にかかわらず,老化に伴いわずかに増加した.これらの傾向は単糖,スクロースおよびシクリトールと異なっていたことから,2-CEIX の役割が可溶性糖質とは異なると考えられた.2-CEIX は師管液および導管液に検出されなかった.以上の結果は 2-CEIX がスイートピーにおいて主要な低分子窒素化合物であるとともにさまざまな器官において合成されることを示唆している.