抄録
トルコギキョウにおいて,花の発達と開花に伴う花弁細胞の形態変化を調査した.花弁表皮細胞の形態は走査型電子顕微鏡で観察し,さらに細胞数を測定した.花の発達に伴い向軸側および背軸側の表皮細胞数は増加した.向軸側および背軸側表皮細胞数の増加は開花する前に停止し,これは背軸側表皮細胞のほうが向軸側表皮細胞よりも早期であった.細胞数と細胞面積を測定した結果から花弁の成長は 4 段階に分けられることが示された.最初の段階は細胞の分裂と肥大,次の段階は細胞分裂,3 番目の段階は細胞の分裂と肥大,最後段階は細胞の肥大である.花弁の向軸側表皮細胞は円錐乳頭状形であり,背軸側表皮細胞は縦長な形状を示した.背軸側表皮細胞は花弁の舷部および基部ともに縦長な形状を示した.蕾と開花した段階の花弁細胞の微細構造を透過型電子顕微鏡で観察した.蕾の段階の花弁細胞は主として液胞で占められていたが,核と多数のプラスチドも観察された.比較的大きい球形のボディは蕾の段階における向軸側表皮細胞の液胞においてのみ観察された.開花した段階では花弁細胞は肥大した液胞で占められていた.以上の結果からトルコギキョウの花弁成長は細胞分裂と肥大のパターンから 4 段階に分けられること,最後の段階は主として液胞の肥大による細胞の肥大に依存することが明らかとなった.