2020 年 25 巻 1 号 論文ID: 1825
ラムサール条約湿地である伊豆沼・内沼で、冬季の水位が例年よりも平均 26 cm低下した 2016/17年は、過去最高の 6,461羽のオオハクチョウが沼に飛来した。その分布を定点カメラで分析したところ、前年には湖岸域でも沖合でもオオハクチョウの分布数は少なかったが、 2016/17年には分布数が 3.6倍に増加し、主に湖岸域に分布していた。オオハクチョウは水底を掘り、数 cm -30 cmの長さのレンコンを採食していた。 2016/17の冬にオオハクチョウが分布していた湖岸域では、翌夏にはハス群落が消失した。一方、ほとんど分布していなかった沖合ではハス群落に変化は見られなかった。ハス群落が消失した湖岸域の水深は、例年約 1.0 mであったが、この年には 0.74 mに低下し、オオハクチョウが水底のレンコンを採食可能な条件になっていた。これらの結果から、オオハクチョウの採食活動がハス群落の消失をもたらしたと考えた。この採食活動により 64.4 haのハス群落が消失し、開放水面となった。伊豆沼の溶存酸素濃度は前年よりも高い値を示し、沼の溶存酸素濃度分布と開放水面の分布との間には正の相関関係が見られた。水位低下によって生じたオオハクチョウの採食活動は、沼のハス群落の分布や水質に影響を及ぼしていた。