近年、自然環境を積極的に活用して人間社会の発展を目指すアプローチとして、グリーンインフラストラクチャー:Green Infrastructureが注目されている。特に生態系を防災インフラとして活用するEcosystem based Disaster Risk Reduction(Eco-DRR)は、増加する自然災害に対する行政施策としても期待されている。GIは生態系をインフラとして人間社会に組み込み、生態系サービスを計画的に受益することを目指す考え方なので、その推進には人間社会における制度等が重要な役割を果たすと考えられる。本研究は、行政におけるEco-DRR関連の事業を推進する要因を社会制度の面から明らかにするため、土地利用基本計画および全国の自治体を対象としたアンケート調査の結果を利用し、Eco-DRR関連の事業等の実施と、計画上の土地区分比率、行政計画におけるGIの位置づけとの関係を検討した。アンケートの回答があった673の市町村を対象に統計モデルによる分析を行った結果、土地利用基本計画上の森林区域および農業区域が占める比率が大きい自治体では、それぞれに関係するEco-DRR関連の事業が実施されている傾向が検出された。一方で、土地利用計画上の都市区域が占める比率が大きい自治体では、都市に関するEco-DRR関連の事業の実施があまり実施されていない傾向が検出された。この理由として、森林および農地が卓越する地域では既存の生態系をGIとして活用できるのに対し、都市はGIとして機能しうる人工物を設置するコスト面の課題等が考えられた。行政計画については、総合計画における位置づけは、対象とする生態系を問わず少なくとも今回事例を提示したEco-DRR関連の事業の推進に貢献する可能性が示された。それ以外の行政計画も、各土地区分に直接関連する計画は、その土地区分におけるEco-DRR関連の事業を推進する可能性が示された。土地利用基本計画における土地区分と行政計画は、いずれもEco-DRR推進を駆動する重要要因であると考えられた。
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