保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
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原著論文
  • 高倉 耕一, 土田 華鈴, 松井 正文, 富永 篤, 吉川 夏彦, 江頭 幸士郎, 福谷 和美, 福山 伊吹, 山本 和宏, 松原 康平, ...
    2025 年30 巻2 号 p. 139-148
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/25
    [早期公開] 公開日: 2025/11/17
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    電子付録

    外来種と近縁在来種との間で生じる交雑が様々な分類群で問題となっており、それによって生じた交雑個体の管理が急務とされている。しかし、交雑個体は、その存在が確認された時点ですでに個体数を増やし、広い範囲に分布していることもしばしばで、その現状を把握することがまずは必要とされる。本研究は、京都市賀茂川におけるオオサンショウウオ類の個体群サイズを経時的に推定し、外来種および交雑個体の管理に必要な基礎的知見を提供することを目的とした。在来種オオサンショウウオAndrias japonicusは、生息地の環境悪化や分断に加え、中国産外来種チュウゴクオオサンショウウオAndrias davidianusとの交雑による遺伝的独自性の喪失や個体数減少の危機にさらされている。賀茂川は、交雑が進行している地域であり、2005年から2021年の間に134回の調査が実施されてきた。本研究では、これらの調査データを基にベイズ法による状態空間モデルを構築し、日本産個体、外来種個体、雑種第1代、世代不明交雑種の個体群サイズを推定した。解析の結果、現在の賀茂川では世代不明交雑種が主要な個体群を構成し、在来種や純粋な外来種個体の数は極めて少ないことが示された。調査期間のはじめには、雑種第1代の個体群サイズが最も大きかったが、その後、世代不明交雑種に入れ替わっていることから、世代不明交雑種と判定された個体の多くは雑種第2代以降であると考えられた。また、調査1回あたりの個体発見率は0.1%未満と低く、現在の調査手法では個体群サイズ抑制には効果が乏しいことが示された。さらに、在来種や雑種第1代個体の生存率は調査期間中に低下しており、老齢化が進行している可能性が示された。これらの結果は、外来種および交雑個体の管理には、対象地域を限定したり、より効率的な防除手法を採用したりする必要があることを示している。

  • 大澤 剛士, 西田 貴明, 遠香 尚史, 山野 博哉, 小笠原 奨悟
    2025 年30 巻2 号 p. 149-160
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/25
    [早期公開] 公開日: 2025/11/17
    ジャーナル オープンアクセス HTML
    電子付録

    近年、自然環境を積極的に活用して人間社会の発展を目指すアプローチとして、グリーンインフラストラクチャー:Green Infrastructureが注目されている。特に生態系を防災インフラとして活用するEcosystem based Disaster Risk Reduction(Eco-DRR)は、増加する自然災害に対する行政施策としても期待されている。GIは生態系をインフラとして人間社会に組み込み、生態系サービスを計画的に受益することを目指す考え方なので、その推進には人間社会における制度等が重要な役割を果たすと考えられる。本研究は、行政におけるEco-DRR関連の事業を推進する要因を社会制度の面から明らかにするため、土地利用基本計画および全国の自治体を対象としたアンケート調査の結果を利用し、Eco-DRR関連の事業等の実施と、計画上の土地区分比率、行政計画におけるGIの位置づけとの関係を検討した。アンケートの回答があった673の市町村を対象に統計モデルによる分析を行った結果、土地利用基本計画上の森林区域および農業区域が占める比率が大きい自治体では、それぞれに関係するEco-DRR関連の事業が実施されている傾向が検出された。一方で、土地利用計画上の都市区域が占める比率が大きい自治体では、都市に関するEco-DRR関連の事業の実施があまり実施されていない傾向が検出された。この理由として、森林および農地が卓越する地域では既存の生態系をGIとして活用できるのに対し、都市はGIとして機能しうる人工物を設置するコスト面の課題等が考えられた。行政計画については、総合計画における位置づけは、対象とする生態系を問わず少なくとも今回事例を提示したEco-DRR関連の事業の推進に貢献する可能性が示された。それ以外の行政計画も、各土地区分に直接関連する計画は、その土地区分におけるEco-DRR関連の事業を推進する可能性が示された。土地利用基本計画における土地区分と行政計画は、いずれもEco-DRR推進を駆動する重要要因であると考えられた。

総説
  • 中濵 直之, 大脇 淳, 速水 将人
    2025 年30 巻2 号 p. 161-174
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/25
    [早期公開] 公開日: 2025/11/17
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    人間活動を起因とした全球的な環境変化により、全球的に訪花昆虫の喪失が大きな問題となっている。訪花昆虫のうち、送粉者は野生植物や栽培植物の送粉に欠かせないことから、これらの保全は国内外で喫緊の課題といえる。こうした現状を受け、国内外で訪花昆虫の保全活動や保全生態学的研究が実施されている。しかしながら、日本国内ではこうした訪花昆虫の保全手法が網羅的に紹介された日本語の書籍や総説論文が非常に少なく、具体的に保全活動を実施するために必要な資料が不足しているという問題点があった。そこで本稿では、主に日本の訪花昆虫の保全手法を網羅的に取りまとめ、整理した。訪花昆虫の主要な生息地である森林生態系や農業生態系、都市生態系における保全手法のほか、近年虫媒植物と訪花昆虫に壊滅的な被害をもたらしているニホンジカに対する対策、さらに訪花昆虫や虫媒植物の生息地の再生方法などをそれぞれ紹介している。ビーホテルなどを用いた訪花昆虫の生息地再生など、日本でほとんど研究が実施されていない分野については適宜海外の研究事例を紹介した。訪花昆虫を取り巻く情勢は一層厳しいことから、今後は知見の不足している分野の研究の推進、保全再生手法の開発やその効果検証などが望まれる。

調査報告
  • 加賀山 翔一, 近藤 めぐみ, 尾崎 真澄, 松本 健二, 西堀 智子, 小賀野 大一, 小林 頼太
    2025 年30 巻2 号 p. 175-188
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/25
    [早期公開] 公開日: 2025/11/17
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    電子付録

    特定外来生物アライグマによる捕食は、日本在来の生物多様性を喪失させる脅威の1つである。千葉県房総半島では、2008年頃からアライグマの捕食による日本固有種ニホンイシガメの個体数減少が生じている。アライグマによる被害は越冬期に集中することから、捕食圧を軽減させる越冬環境の把握とその整備は必須な課題である。本研究では、アライグマが侵入した細流においてニホンイシガメの捕獲調査を実施したところ、主要な越冬環境はノイバラに覆われた浅瀬に堆積した泥の中であることが確認された。その後、ノイバラに覆われた浅瀬が年々減少するとともに、ニホンイシガメの推定個体数が減少したことから、ノイバラに覆われた浅瀬はアライグマからの捕食圧を軽減させる隠れ家として機能していたものと推察された。今後は、アライグマの防除を行いつつ、捕食圧を軽減させる越冬環境の創出とニホンイシガメの個体数の変化を長期的にモニタリングしていくことが望まれる。

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