保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
特集 鳥衝突を未然に防ぐセンシティビティマップの普及に向けて
北海道北部地域を対象としたオジロワシの営巣適地推定
藪原 佑樹赤坂 卓美山田 芳樹原 拓史奥田 篤志河口 洋一
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2022 年 28 巻 2 号 p. 281-

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抄録

風力発電は、風車への衝突や生息地放棄により、野生生物に対して負の影響を及ぼす例が知られる。風力発電と野生生物の保全を両立させるためには、風力発電の影響に脆弱な種の生息に配慮して風力発電の立地を検討する必要がある。対象種の広域生息情報に基づくセンシティビティマップは、風力発電の戦略的な立地選定を支援する有効なツールであるが、広域を網羅する生物の生息情報は入手困難な場合が多い。そこで、既知の生息地点における環境条件から生息適地モデルを構築し、潜在的な生息適地を広域で推定する手法が活用できる。本研究では、国内での風車衝突事故が多いオジロワシを対象として、営巣木の確認地点を基に営巣適地モデルを構築し、北海道北部地域における潜在営巣適地図を作成した。野外調査と既存情報から 55つがいの営巣木を特定し、日本海側の 43地点を基に Maxentを用いて営巣適地モデルを構築し、オホーツク海側の 12地点を用いてモデルの予測精度を評価した。環境要因については、土地被覆と地形に関する 6種類の指標を様々な空間スケールで集計し、オジロワシの営巣と最も関係する空間スケールを特定した上で、モデル構築に使用した。モデルの過剰適合を防ぐために Maxentのパラメータを調整し、クロスバリデーションにより予測力の高いモデルを選択した。営巣適地モデルの結果から、オジロワシの営巣適地は広域スケールでの土地被覆および局所スケールでの地形要因と強い関係があり、複数の空間スケールで営巣地を選択していることが示唆された。特に、森林面積、林縁密度、水域面積、平均標高が寄与率の大部分を占め、森林と水域が中程度に存在する低標高の場所で適地指数が高かった。営巣適地モデルの評価指標である AUCや CBIの値は 0.783 -0.886であり、おおむね高い精度でオジロワシの営巣適地を推定できていると考えられる。オジロワシに対する風力発電の影響を未然に回避するためには、本研究で作成した潜在営巣適地図を活用しながら、風力発電施設がオジロワシの主要な生息場所と重複しないよう、慎重に立地を選定する必要があるだろう。

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