保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
特集 鳥衝突を未然に防ぐセンシティビティマップの普及に向けて
鳥類に対する風力発電施設の影響を未然に防ぐセンシティビティマップとその活用方法
関島 恒夫浦 達也赤坂 卓美風間 健太郎河口 洋一綿貫 豊
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2023 年 28 巻 2 号 p. 233-

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抄録

日本政府は、 2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを表明した。その実現に向けて、今、太陽光、風力、水力、地熱発電などのエネルギー源を利用した再生可能エネルギーが注目されている。その中でも風力発電については、北海道、東北、九州を中心に好風況地域が存在し将来的に高い導入ポテンシャルが期待されることから、今後、陸域および海域において大きく推進される可能性が高い。一方、風力発電の導入が全国各地で進むにつれて、計画段階における環境紛争も顕在化してきた。主たる紛争論点は、騒音・低周波音、土砂災害・水質汚濁、景観、自然、鳥類であり、特に鳥類については、オジロワシ Haliaeetus albicilla、クマタカ Nisaetus nipalensis、イヌワシ Aquila chrysaetosなど希少猛禽類の生息地における風車建設が鳥衝突や生息地放棄を引き起こす可能性が危惧され、紛争発生の大きな要因となっている。 2050年目標の達成に向けて、陸域および海域において、大規模な風力発電事業が全国的に展開されていくことになれば、環境紛争はより深刻化していく可能性も否めない。そこで、風力発電事業による環境影響を未然に防ぐために必要な情報を提供するのがセンシティビティマップである。センシティビティマップとは、重要な鳥類の生息分布や保護区等の情報に基づき、鳥類が風力発電の影響を受けやすい場所を示したマップのことを指す。本総説では、はじめに、センシティビティマップの概念を説明し、その活用手段として環境アセスメントとの関わりを述べる。続いて、これまでに提案されてきた様々なセンシティビティマップの特徴を紹介するとともに、その適切な空間解像度を考察する。最後に、 2050年カーボニュートラルの目標達成に向けた再生可能エネルギー推進の今後の取り組みにおいて、センシティビティマップが果たす役割について述べる。

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