保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327

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野生生物管理の空間スケールに対応した管理主体と役割
梶 光一
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ジャーナル オープンアクセス 早期公開

論文ID: 1917

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抄録

野生生物の被害防除や管理には、生物学的な範囲に基づく管理範囲とそれに対応する適切な行政組織の対応が求められるが、対象とする空間スケールが拡大するにつれて、根拠法令と関わる行政組織が増加して管理の仕組みが複雑となる。ウメ輪紋病は根絶すべき対象であり、その緊急防除範囲は半径 500 mであり、国と県の役割は明確で管理ユニットと行政単位のギャップは少ない。クロマグロは大きく資源が減った国際資源であり、国際機関によって決定された国内枠を沿岸と沖合いに割り当てている。その合理的な再配分方法の検討は開始されたばかりであるが、管理の範囲と実施する行政組織の対応は明確である。これらに対し、野生鳥獣(カワウ、ニホンジカ)は、市町村、都道府県、複数の県にまたがって分布しており、市町村が実施する有害捕獲および都道府県が実施する個体数調整によって捕獲が実施されているが、管理対象範囲が不明確であり、都道府県と市町村で捕獲数の割当についての明確なルールもなく、役割分担があいまいであり、管理対象範囲と対応する行政組織にギャップが生じている。このギャップを解決するために、補完性原則にもとづいて、市町村の有害捕獲(駆除)を最優先し、都道府県は市町村との連携のもとで個体数調整を広域に実施する必要がある。

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