論文ID: 2131
農地景観において、再森林化した耕作放棄地は、森林性生物の有用な保全地として期待されてきている。このため、優先的に保全地として活用する耕作放棄地の立地条件を明らかにしていくことが求められる。しかし、森林面積や林齢、樹種構成といった森林に関わる多くの要因は共変することが多く、鳥類の分布等に対して最も重要な要因が不明瞭になることが多い。そのため、複数の要因固有の寄与率の評価が重要となる。そこで本研究では、農地景観に生息する夜行性フクロウ類に配慮した森林管理に資する知見の提供を目的に、フクロウの分布に影響を与える要因として森林の面積、景観構造、そして森林の質の相対的重要性を、Variation partitioning を応用した寄与率解析を用いて明らかにした。フクロウの分布調査は、北海道十勝平野においてプレイバック法を用いて行った。統計解析の結果、フクロウの分布は、平地広葉樹林の面積や林齢(それぞれ正の効果)、そして、河畔林のパッチ数(負の効果)が関係していたが、林齢とパッチ数の純効果はほとんどなく、平地広葉樹林面積の純効果が最も大きかった。このことは、大面積の森林に依存し、分断化に対して脆弱と想定されるフクロウの分布に対して、森林の空間配置よりもむしろ森林の総面積が重要であることを示唆する。ただし、面積と林齢の共有効果も大きかったことから、今後フクロウを保全するためには、耕作放棄地周辺の総森林面積だけでなく、老齢林の存在にも注目する必要があるだろう。