論文ID: 2201
気候変動への適応策の推進は、国および地域レベルの重要な社会的・政策的課題である。気候変動適応策では、現在生じている問題への対処や、予測される将来の環境条件下において生態系や社会システムのパフォーマンス(農作物の収量や健康リスクの低さなどの成果)を維持するような方策が検討されることが普通である。しかし、このようなアプローチ(最適化型アプローチ)は予測通りにならなかった場合における脆弱性をもつ。本稿では、最適化型アプローチとは別の考え方による適応策として、「適応力向上型アプローチ」について解説する。適応力向上型アプローチは、突発的な環境変動や必ずしも予測通りの将来にはならないという不確実性への対応として有効なアプローチであり、システムの「変化力」「対応力」「回復力」を高めることによって実現する。これらの概念について解説するとともに、変化力・対応力・回復力を高める上で有効であると考えられる方策について、実例に則して論じる。