論文ID: 2207
湿地の植物種の生育に関する詳細な情報を取得することは、湿地マネジメントにおいて重要である。特に標高勾配は湿地植物の空間パターンを規定する主要な環境要因となる。 Light detection and ranging(LiDAR)を使えば湿地の地形を高い空間解像度で把握することができる。 Unoccupied aerial vehicles(UAV)搭載 LiDARにより取得した高解像度 Digital terrain model(DTM)は、湿地生態系の分析の精度と効率を高めることが期待される。本研究では、湿地生態系の指標となる植物種を選定し、分布と地形の関係を分析することで、湿地マネジメントに有用な情報を効率的に取得する方法を提示することを目的とした。滋賀県大津市南小松にある近江舞子内湖の周辺に広がる湿地を調査地とした。冬期に UAV搭載 LiDARで計測し、 DTMを作成し、指標種と標高の関係を分析した。湿地に生育する草本植物の地上部が枯れ、落葉樹が落葉する冬期に UAV搭載 LiDARで計測することで、最終的な地図上での精度(絶対位置精度)が ± 5 cm以下の高解像度 DTMを作成することができた。湿地に生育する指標種を 5種選定し、湿地の踏査により発見個体の位置の標高を種ごとに集計した結果、種による分布標高の違いが明らかになった。少ない労力で高解像度 DTMが取得でき、種による分布標高の違いを明らかにできる本研究の方法は、湿地植物の新しい調査方法となると考えられる。湿地の標高を区分し、内湖の水際からのゾーネーションおよび微地形によるモザイクを示した地図は、湿地マネジメントの基盤情報となることが期待される。