論文ID: 2210
愛知県の谷津田の 2地点に生息するホトケドジョウの消化管内容物を四季にわたって調べた。全体では個体数および湿重量はいずれもユスリカ科が最大であった。また、個体数ではカイアシ亜綱、カクツツトビケラ科が多く、湿重量ではイシビル科、ガガンボ科が大きかった。餌料重要度百分率( %IRI)の解析結果では、いずれの地区でもホトケドジョウの体長が 50 mm未満の階級においてユスリカ科が最大であった。 50 mm以上 60 mm未満の階級では、それ未満の体長階級よりもユスリカ科の %IRIが低く、イシビル科やカクツツトビケラ科、ガガンボ科などの比較的湿重量の大きいものが高かった。また、ホトケドジョウの標準体長と餌生物の最大湿重量の間には弱い正の相関が認められた。季節ごとの餌生物の %IRIは、地区 Bの 6月を除いて、両地区のいずれの季節においても、ユスリカ科が最大であり、冬季のユスリカ科の %IRIが他の季節よりも高かった。本研究では餌となる底生無脊椎動物等の現存量を定量化しなかったものの、ホトケドジョウが四季を通じてユスリカ類を利用すること、特に冬季には本分類群に強く依存する傾向が示唆された。本研究の結果、ホトケドジョウの保全を図る上で仔魚・稚魚期および冬季の主な餌資源であるユスリカ類が多く生息し、イシビル科やガガンボ科等の比較的大型の水生無脊椎動物を含む多様な底生生物が生息可能な環境の保全が重要であることが示された。