論文ID: 2214
スパルティナ・アルテルニフロラ(Spartina alterniflora Loisel.)は北アメリカの大西洋岸およびメキシコ湾岸原産の干潟や河口の塩性湿地に生育するイネ科多年生草本である。本種は干潟の陸地化や沿岸域の保護を目的とした意図的な導入、また非意図的な移入・逸出によって世界各地に分布を広げており、定着地に大規模な密生群落を形成することで在来の生態系や産業に大きな影響を及ぼしている。日本国内において、本種は 2008 年に愛知県豊橋市の梅田川河口で初めて確認され、その後 2010 年に熊本県で確認された。スパルティナ・アルテルニフロラのもつ干潟生態系への脅威から、2014 年には本種を含むスパルティナ属全種が特定外来生物に指定された。本稿ではスパルティナ・アルテルニフロラの形態的・生態的な特徴と、2020 年に山口県下関市で新たに確認された本種の侵入状況ならびに駆除の現状についてとりまとめた。