要旨: 奈良公園の飛火野と春日山原始林のシカの糞を分析したところ、飛火野の糞では5月から10月までシバが30-40%を占める主要な食物であったが、1月には繊維が多くなった。春日山原始林の糞では葉は少なく、繊維と不明物(半透明な種子破片、芽鱗など)が多く、7月でも葉は少なかった。これらは調査地の下層植生の量を反映していた。春日山原始林のシカは、林外の草原を餌場として利用せず、林内の樹皮、下層植生の枝葉、枝、林床の種子・果実などを採食しており、森林の構造と更新に深刻な影響を及ぼしている。このことから奈良公園のシカの保護と春日山原始林の保全の両立の問題点を指摘した。
Abstract: We used faecal analysis to assess the diets of sika deer from Tobihino Park and Kasugayama Forest Reserve (KFR) in Nara, Japan. In Tobihino Park, the lawn grass Zoysia japonica was an important food source from spring to autumn, whereas higher-fibre foods were consumed in winter. In the KFR, deer consumed mostly fibrous foods and other unidentified materials (seed fragments, bud scales, etc.), and leaves formed a relatively minor part of their diet, even in summer. These differences reflected the understory plant communities of the respective sites. Deer from the KFR mostly consumed plants endemic to the forest, impacting forest structure and regeneration. These results highlight the challenges inherent in balancing the maintenance of “park deer” and the conservation of forests around the KFR.
芝生が広がる公園にシカ(ニホンジカCervus nippon)がたわむれるという奈良の風景はよく知られ、「奈良公園の風景のなかにとけこんで、我が国では数少ないすぐれた動物景観を生み出している」(文化庁文化財保護部 1971)として天然記念物に指定されている。この奈良のシカは品種改良されていないという点で家畜でもペット(伴侶動物)でもなく、紛れもない野生動物である。その特徴は人慣れしているということと高密度であるということである。奈良公園のシカは大切に守られてきたこともあり、独自の遺伝学的集団を形成し、1000年以上のあいだ周辺地域のシカ集団から孤立してきたと考えられている(Takagi et al. 2023)。現在の奈良のシカの個体数密度は1100頭/km2ほどであり(岡崎・辻野 2017)、これはシカ高密度で知られる宮城県金華山島の40頭/km2(高槻 2006)や北海道の洞爺湖中島の約60頭/km2(Kaji et al. 1988)、大台ヶ原の20-30頭/km2(安藤・合田 2009)などよりもはるかに高い。高密度である結果、奈良公園ではシバZoysia japonica Steud. 群落が発達している。シバ群落は強い採食圧がかかることで維持されており、シカの密度が高くなければススキMiscanthus sinensis Andersson群落に移行する(Takatsuki 2021)。シカの頭数が100頭未満になった戦後すぐに奈良のシカを研究した川村(1971)は、飛火野にススキ群落があったことを記録している。この高密度のシカは、奈良公園の景観の一つとして親しまれているが、奈良全体の自然の保存という観点から見ると問題がある。それは春日山原始林の保全である(前迫 2002)。
奈良公園の背後には特別天然記念物である春日山原始林がある。この林はこの地方の原生的な植生であり、学術的および生態系として貴重である。また、歴史的記録があるという意味でも特異であり、西暦841年に春日大社の神域とされた(前迫 2002)。春日山原始林は当地域の原生的照葉樹林として1956年に天然記念物に指定され、1998年には春日大社とともに文化遺産としてユネスコ世界遺産に登録された(奈良市 1999)。しかし、この春日山原始林に高密度の奈良のシカが侵入して、森林植生に強い影響を及ぼし、林床が貧弱になっている(小清水・菅沼 1971;前迫 2000)。また森林の構造だけでなく、森林更新の阻害という点でも大きな問題があり、林冠を形成するシイ、カシ類の実生が乏しいために更新が阻害されている(Shimoda et al. 1994)。また、その更新過程で、シカが採食しないナギNageia nagi (Thunb.) Kuntzeや外来種のナンキンハゼTriadica sebifera (L.) Smallが定着し、場所によっては常緑広葉樹のイチイガシQuercus gilva Blume林から針葉樹のナギ林への置き換えが起きている(Maesako et al. 2007;前迫 2022)。その意味で奈良全体の自然を考えると、奈良公園にいる高密度のシカの野生動物管理と、春日山原始林の保全を両立するという難しい課題がある(前迫 2002)。この課題に取り組むためになすべきことは多いが、シカの食性解明は基本項目の一つである。
奈良公園のシカの食性は1976年に糞分析法で調べられており、飛火野ではシバを主体とし、若草山ではシバの占有率が非常に大きく、5月に32%、8月に71%、10月に47%を占めたが、1月には10.3%と大きく減少することがわかった(高槻・朝日 1978)。このことは胃内容物分析によっても確認された(鳥居ほか 2000)。ところが春日山原始林に生息するシカの食性はまったく知られていない。そこで、本研究では飛火野のシカの食性の半世紀後の現状と、春日山原始林内のシカの食性を明らかにすることにした。
調査地
調査地は奈良公園内にとった。県立都市公園の「奈良公園」は飛火野、若草山などを含む502 haの範囲だが、一般には文化財保護法による「名勝奈良公園」と周辺の興福寺や春日山などを含む660 haを「奈良公園」と呼ぶ。春日山原始林は250 haで、特別天然記念物に指定されている。調査地は飛火野(調査地1)とその東方に続く春日山原始林内(調査地2)の2カ所とした(図1)。調査地1は名勝奈良公園からは外れるが、それに取り囲まれているので、一般には「奈良公園」と呼ばれる範囲である。平坦地でシバ群落が優占し(図2a)、観光客が多く、シカ密度も1100頭/km2と高い(岡崎・辻野 2017)。調査地2は春日山の西側標高300 mの山腹斜面にとった。ここの北側には若草山がある(図1)。調査地2の植生は発達するツクバネガシQuercus sessilifolia Blume・コジイ(ツブラジイ)Castanopsis cuspidata (Thunb.) Schottky林である。ここではコジイ、ツクバネガシなどのブナ科常緑広葉樹が優占し、下層植生としてはイヌガシNeolitsea aciculata (Blume) Koidz.、シキミIllicium anisatum L.、アセビPieris japonica (Thunb.) D.Don ex G.Don subsp. japonica、クロバイSymplocos prunifolia Siebold et Zucc. などが生育する。林床植生にはコバノイシカグマDennstaedtia zeylanica (Sw.) Zink ex Fraser-Jenk. et Kandelやイヌガシ、シキミなどシカの不嗜好植物のみが生育し、きわめて貧弱である(図2b)。春日山のシカ個体密度は春・夏期(5 - 7月)には10.6 - 84.9頭/km2,秋期(10 - 11月)には0 - 148.6 頭/km2 であった(前迫ほか 2018)。
方法
調査地で新鮮なシカの糞を探し、1糞塊から10粒を10糞塊から採集した。糞採集は春として2023年5月、夏として7月、秋として10月、冬として2024年1月におこなった。これを0.5 mm間隔のフルイ上で水洗し、植物片を光学顕微鏡で検鏡し、ポイント枠法で評価した(Stewart 1967)。ポイント数は100以上とした(Takatsuki 1978)。食物はシバ、その他のイネ科、スゲ属、その他の単子葉類、双子葉植物、常緑広葉樹、針葉樹、枯葉、果実、種子、稈、繊維、不明、不透過物に分けた。「不明」は葉や果実ではなく、光学顕微鏡で見て透過性があるが、特定できないもので、破砕した種子や芽鱗の断片なども含む可能性がある。「不透過物」は真っ黒に見えるもので、ドングリの種皮や樹皮などを含む可能性がある。
またシカの食物供給量の指標として、調査地の下層植生の記述をした。春として2023年5月、夏として7月、秋として10月、冬として2024年1月に、各地に1 m四方の方形区を10-20 m離してランダムに10個とり、出現種の被度(%)と高さ(cm)を記録した。枯れた植物や葉をつけていない木本植物は除外した。この被度と高さの積をバイオマス指数(高槻 2009)として平均値を算出した。そして高木樹種、低木、シダ、つる、シバ、双子葉草本のタイプごとにまとめた。
また調査地1と調査地2でシカ生息密度が明らかに違うので、シカの利用度の指標としてシカの糞粒密度を調べた。2023年11月に方形区をとり、その中のシカの糞を排除し、2カ月後の2024年1月にこの期間中に追加された糞数を数えた。方形区面積は、調査地1では2 m四方としたが、調査地2では糞粒が少なかったので10 m四方の方形区をそれぞれ5つとった。方形区は10 m程度の間隔をとった。
糞粒密度は調査地間をマン・ホイットニー検定により評価した。α = 0.05とした。検定には「Mac統計解析Ver.3.0」(株式会社エスミ)を用いた。
シカの糞組成
調査地1(飛火野)では5月から10月までは、シバが30%以上を占めた(表1)。特に5月と7月には40%以上となった。そのほかでは5月に双子葉植物と繊維が多かった。7月にはシバ以外では稈が多くなった。10月になるとシバがやや減少し、稈が32.2%と大幅に増え、シバ以外のイネ科も13.5%を占めた。しかし1月になるとシバは大幅に減少し(3.6%)、繊維が39.2%を占めたほか、不明も27.0%と大きく増えた。
一方、調査地2(春日山原始林)の糞では調査地1とは大きく違い、シバはほとんど検出されなかった(表1)。5月に多かったのは、繊維(47.7%)と常緑広葉樹(17.8%)で、シカは林内で常緑樹の葉を枝とともに採食することが多いと考えられる。7月になると繊維が60.1%もの大きい割合を占め、枯葉も11.8%であった。通常、ニホンジカの食性においては、冬に繊維や樹皮などが多くなるが(Takahashi et al. 2013;Takatsuki 1986;Takatsuki and Padmalal 2009)、これらはタンパク質など栄養価の高い成分が乏しい(池田・高槻 1999)。夏には緑葉(木本、草本を含めた葉、枯葉は含まない)が豊富にあるので、シカの食物中でも緑葉が多くなる。にもかかわらず、7月でも繊維が60%ほどを占め、緑葉の合計が10.1%であった(表1から計算)ということは、ここのシカの食糧事情は非常に劣悪であることを示している。10月になっても緑葉は増えず、繊維は19.6%に減少したものの不明物が28.9%に増加した。また不透過物も31.0%と多くなった。この不透過物はドングリの殻(種皮)などを含む可能性がある。1月も同様であったが、不明がさらに増えた(43.7%)。
供給量
調査地1でのバイオマス指数の季節変化は5月から10月までは300 - 500と非常に大きかったが、1月になるとシバが枯れたため大きく減少した(図3a)。
一方、調査地2では5月は高木樹種と低木が少量あるだけだったが、7月になるとシダと高木樹種が増えてピークとなった。ただし値は調査地1の半量以下であった。その後、10月には減少し、1月には常緑高木樹種がわずかになった(図3b)。
冬の糞粒密度
11月から1月の間に追加されたシカ糞粒密度は調査地1で40.1粒/m2あったが、調査地2では3.2粒/m2であり、調査地1の方が有意に高かった(マン・ホイットニー検定、Z = 2.61, P = 0.009)。
飛火野のシカの食性と利用度
飛火野のシカの糞組成では5月と7月にはシバが40%前後を占めたが、半世紀ほど前の1976年の糞組成でもシバが春は30 - 40%、夏には70 - 80%占めていたので(高槻・朝日 1978)、基本的にシバ依存的という意味で共通していた。シバは生産力が高く(吉良 1952;Inoue et al. 1975;高槻 2022)、シカにとって生育期のシバは非常に重要な食物となりうるが、現存量が小さいため、枯れると飼料価値は大幅に減ると考えられる。実際、バイオマス指数の変化はこれを裏付けていたし、糞組成でも1月にシバは大きく減少した。奈良公園同様、シカが高密度である宮城県金華山においては、夏にシバ群落を利用していたシカは冬には利用度が大幅に低下して、周辺の森林を利用するようになることが知られている(Ito and Takatsuki 2005)。調査地1(飛火野)ではシバが枯れても、観光客がシカせんべいを与えるなどの理由でシカがシバ群落にとどまるものと考えられる。飛火野のシカの1月の糞組成では繊維が増えたことから、シカはおそらく木本植物の枝などを採食したと考えられる。
春日山原始林のシカの食性と利用度
春日山原始林のシカの食性はこれまで知られていなかったが、今回初めて明らかになった。それによると、春日山原始林のシカの糞組成は飛火野のそれとはまったく違い、イネ科はほとんど出現せず、5月に常緑広葉樹が10 - 18%を占めた。他の季節では葉は少なく、繊維や不明物が多かった。春日山原始林の森林は林内が暗く、草本類もきわめて少ないため、シカが採食する植物が乏しかった。おそらくシカは常緑樹を探して採食するが、その時に枝先も採食するために繊維が多いものと推察される。実際、バイオマス指数も少なかったが、7月にはバイオマス指数がある程度大きくなったにもかかわらず、糞組成に葉は少なかった。その理由は、夏(7月)には木本実生やシダのバイオマス指数が大きくなったが、これらはシキミ、イヌガシ、イワヒメワラビHypolepis punctata (Thunb.) Mett. ex Kuhn、コバノイシカグマといった不嗜好植物であり、シカは採食しないからである。ただし枯葉は5月と7月に12 - 15%を占めた。調査地2は若草山と500 mほどしか離れていない。若草山は草原であり、シカの食物になる植物が多く、1976年の糞分析では夏(8月)にはシバが70%ほどを占めていた(高槻・朝日 1978)。この距離はシカにとって移動は容易だと思われるが、糞組成にはシバを含むイネ科はほとんど検出されなかった。このことは、春日山原始林のシカはほとんどが林内に留まり、行動圏内に草原を含む個体がほとんどいないことを示唆し、この点は今後解明される必要がある。利用度の指数として冬の糞密度を調べた結果、春日山原始林の糞密度は飛火野の7.9%に過ぎなかった。奈良公園平坦地でのシカ密度は1100頭/km2(1年間のセンサスによる)であるのに対して(岡崎・辻野 2017)、春日山原始林では夏期84.9頭/km2、秋期148.6頭/km2 であった(前迫ほか 2018)。このうち、春日山原始林のシイ・カシ林に限定すると、18.1頭/km2であった。これらは調査の季節が違うが,シカ糞密度が奈良公園シバ草地と春日山原始林で桁違いに高いことを示し、生息密度と対応していた。これは暗い常緑広葉樹林では食物が乏しく、シカにとって食物確保の場としては利用価値が低いことを示唆する。
飛火野のシカと春日山原始林のシカの関係
この分析により、春日山原始林内のシカの食性は奈良公園の平坦地のものとはまったく違い、シカは林内にとどまって乏しい植物を採食していることがわかった。もし、シカが林外で植物を採食して林内では休息や睡眠だけをするのであれば、森林への影響は問題とならないが、実際にはシバ群落にいるシカはおもにシバを、森林にいるシカは基本的に森林の植物を採食していた。このことは、春日山の原始林の更新のためには問題があることを示唆する。常緑広葉樹林は林床が暗く、採食を受けた植物の回復力が乏しい。春日山原始林では時間をかけて更新する過程で後継樹が供給できず(Shimoda et al. 1994)、場所によってシカの不嗜好植物であるナギやナンキンハゼに置き換わることが知られている(前迫 2022)。そのため樹冠を形成するシイ、カシなどの幼樹が生育できず、健全な森林更新ができない状態にあり、一種の退行遷移が起きているといえる。
奈良のシカと春日山原始林の保全
奈良のシカは長い時間をかけて形成された人とシカとの共存の例として広く知られ、観光的にも価値があり、その保護が必要であろう。しかし、同時に春日山原始林も世界遺産としての価値がある。奈良公園全体の自然を保全する上では、この両方を実現することに難しさがある(前迫 2002)。その両立のためには、現状を把握し、何が起きているかの客観的把握が必要であるが、これまでシカの情報が乏しかった。
本調査により飛火野のシカの食性はシバに強く依存しており、それは1970年代と基本的に同じであることが確認された。つまりここでは、シバ群落がシカの強い採食圧によって維持されると同時に、シバの生産力が高密度のシカ集団を支えるという持ちつ持たれつの関係が成り立っている。そして、そのことが結果として観光的価値も高めている。ただし、冬にはシバが枯れるためにシカの糞中でも1月に占有率が3.6%に減少して、繊維と枯葉が多くなった。つまり、この「シカ-シバ複合体」はシバの生育期にはお互いに必要とし合う関係にあるが、冬には環境収容力が下がり、シカにとっては食物不足になるという関係になり、このレベルがシカ頭数を決めている。宮城県金華山島では1970年代に観光客が増加したために、神社境内のシバ群落でシカに鹿せんべいを与える頻度が高まり、シカ個体数が増え、その結果、周辺のススキ群落がシバ群落に置き換わった(Takatsuki 2021)。現在1200頭前後のシカがいることで維持されている奈良公園のシバ群落も、戦後シカが100頭を下回った頃は(佐藤 2015)、飛火野にススキが生えていたという(川村 1971)。したがって、この頭数が維持されれば、「シカ-シバ複合体」のシカは周辺に拡大する可能性がある。「シカ-シバ複合体」自体は金華山島でも見られる自然現象であり、奈良公園においては観光の重要な要素にもなっているので維持されて良いと思われるが、それは現在の飛火野を中心とした平坦地に限定されるべきで、「シカ-シバ複合体」が周辺に拡大することは抑制する必要がある。
また、本調査により春日山原始林のシカの食性が明らかになり、奈良公園全体の自然のあり方を考える上で重要な知見が得られた。同時にシカの行動圏など解明すべき課題も示された。シカの採食圧が春日山原始林の植生に負の影響を与えていることは明らかであり、森林更新の点からも、ある程度広いシカ排除柵を設置することにより、後継樹の確保をするなどの対策が必要になるだろう。その場合、柵の広さや維持など具体的な問題の検討が必要となる。さらには自然攪乱などによる林冠ギャップ形成後、多様性が高くなる森林の動きに対応して迅速に植生保護柵を設置するような順応的管理が欠かせない(前迫 2022)。現在、2007年以降に設置したシカ柵実験区(前迫 2022)や2013年以降に奈良県によって設置された植生保護柵があるものの、特別天然記念物エリアの数パーセントの小面積にとどまっている。このため、緩斜面のごく一部で後継樹の保護をしているに過ぎず、急斜面や谷部など多様な地形に成立する森林の保全や、森林ギャップを含む森林動態を把握するには至っていない(前迫・高槻 2015)。今後は、奈良公園およびその周辺域をも視野に入れ、奈良のシカの野生動物管理と春日山原始林の統合的な保全を見据えた順応的管理が必要とされる。
本研究を遂行するにあたり、奈良県奈良公園室と春日大社には調査許可をいただいた。大阪産業大学学生の渋谷柊威さんと佐尾晴那さんには野外調査に協力いただいた。各位にお礼申し上げる。本研究の一部は科学研究費基盤研究C(課題番号23K11508)を受けた。
表1.表 1. 調査地1(飛火野)と調査地2(春日山)のシカの糞組成 (%)。SD: 標準
偏差
飛火野 | 5月 | 7月 | 10月 | 1月 | 春日山 | 5月 | 7月 | 10月 | 1月 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平均 | SD | 平均 | SD | 平均 | SD | 平均 | SD | 平均 | SD | 平均 | SD | 平均 | SD | 平均 | SD | |||
シバ | 41.2 | 11.1 | 43.6 | 7.6 | 33.8 | 6.1 | 3.6 | 2.5 | シバ | 1.8 | 2.3 | 0.4 | 0.6 | 1.7 | 2.5 | 1.1 | 0.6 | |
その他のイネ科 | 7.1 | 2.3 | 10.7 | 3.5 | 13.5 | 5.2 | 2.3 | 2.3 | その他のイネ科 | 1.4 | 1.1 | 3.5 | 2.5 | 4.7 | 7.1 | 3.6 | 7.5 | |
スゲ類 | 1.3 | 1.7 | 3.0 | 0.9 | 1.4 | 0.7 | 0.0 | 0.0 | スゲ類 | 0.2 | 0.5 | 0.3 | 0.6 | 0.7 | 1.2 | 0.0 | 0.0 | |
その他の単子葉植物 | 1.0 | 1.1 | 0.4 | 0.8 | 0.5 | 0.6 | 0.4 | 0.6 | その他の単子葉植物 | 1.7 | 1.2 | 0.6 | 0.6 | 0.2 | 0.5 | 0.2 | 0.4 | |
双子葉植物 | 14.7 | 6.5 | 4.3 | 2.4 | 0.7 | 0.7 | 0.9 | 0.9 | 双子葉植物 | 2.6 | 3.8 | 2.5 | 1.9 | 3.6 | 2.2 | 1.3 | 0.8 | |
常緑樹の葉 | 2.0 | 1.1 | 0.2 | 0.3 | 1.1 | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 常緑樹の葉 | 17.8 | 12.6 | 3.1 | 1.9 | 1.1 | 1.1 | 1.7 | 1.3 | |
針葉樹の葉 | 0.2 | 0.3 | 0.0 | 0.0 | 0.8 | 0.6 | 0.0 | 0.0 | 針葉樹の葉 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | |
枯葉 | 0.4 | 0.7 | 4.2 | 2.6 | 0.0 | 0.0 | 12.9 | 6.8 | 枯葉 | 14.6 | 6.4 | 11.8 | 8.0 | 2.9 | 1.6 | 4.2 | 2.8 | |
果実 | 5.9 | 2.4 | 4.3 | 3.0 | 1.1 | 0.7 | 1.8 | 0.8 | 果実 | 1.0 | 1.0 | 2.4 | 1.6 | 0.5 | 0.6 | 1.7 | 1.3 | |
種子 | 0.0 | 0.0 | 0.3 | 0.7 | 0.2 | 0.5 | 0.0 | 0.0 | 種子 | 0.2 | 0.5 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | |
稈 | 8.2 | 3.9 | 15.9 | 5.2 | 32.2 | 8.9 | 0.5 | 0.5 | 稈 | 4.1 | 2.6 | 0.1 | 0.4 | 4.9 | 3.8 | 3.6 | 2.8 | |
繊維 | 13.2 | 5.9 | 7.6 | 3.7 | 7.9 | 1.3 | 39.2 | 17.6 | 繊維 | 47.7 | 22.9 | 60.1 | 5.2 | 19.6 | 6.9 | 20.3 | 5.0 | |
不明 | 3.3 | 2.2 | 0.0 | 0.0 | 2.7 | 1.2 | 27.0 | 7.0 | 不明 | 0.6 | 1.0 | 2.2 | 2.0 | 28.9 | 32.0 | 43.7 | 13.8 | |
不透過物 | 1.5 | 0.8 | 5.5 | 1.0 | 4.1 | 1.0 | 10.8 | 2.2 | 不透過物 | 6.2 | 7.4 | 12.8 | 2.3 | 31.0 | 23.8 | 18.6 | 3.3 | |
合計 | 100 | 100 | 100 | 100 | 合計 | 100 | 100 | 100 | 100 |
図1.図1. シカの糞採集地(●). 調査地1: 飛火野、調査地2: 春日山原始林。灰色部は「名勝奈良公園」の範囲。等高線でない細線は水路、太めの灰色線は道路。
図2. 調査地の景観. a: 調査地1(飛火野)、b: 調査地2(春日山原始林)
図3. 調査地1(飛火野、a)と調査地2(春日山原始林、b)におけるバイオマス指数の季節変化