高圧バイオサイエンスとバイオテクノロジー
Online ISSN : 1882-1723
ISSN-L : 1882-1723
脂質
高圧力下におけるジノナデカノイルホスファチジルコリン二分子膜の相挙動
後藤 優樹戸田 雅隆玉井 伸岳松木 均金品 昌志
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2008 年 2 巻 1 号 p. 68-74

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抄録

対称型飽和diacyl-phosphatidylcholine(PC)脂質の一つであるdiC19-PC(dinona- decanoylphosphatidylcholine)の高圧力下における二分子膜相挙動を示差走査熱量(DSC)測定および高圧光透過率測定により調べ、相転移に伴う熱力学量変化を定量化し、温度-圧力相図を作成した。作成された相図から、飽和diacyl-PCに特徴的なゲル相の多形現象(ラメラゲル相、リップルゲル相、指組ゲル相の存在)が確認された。またdiC19-PC二分子膜の前転移温度(57.5 °C)、主転移温度(60.6 °C)および臨界指組圧力(37.7 MPa)は、一連のアシル鎖長の異なるdiacyl-PC二分子膜についてこれまでに明らかにされている相転移熱力学量のアシル鎖長依存性から予測される値とほぼ一致した。一方、転移エンタルピーや転移体積は予測値よりも有意に大きな値が得られ、二分子膜ゲル相におけるdiC19-PCのより凝縮した分子充填状態が示唆された。

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© 2008 生物関連高圧研究会
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