抄録
本研究では,非転倒経験者と転倒経験者を対象にDual task(以下,DT)条件下で歩行定常状態と障害物を跨ぐ際の歩行パラメータを比較し,歩行調整の違いについて検討をした。対象は,65歳以上の高齢者30名とし,聞き取り調査から非転倒経験群23名,転倒経験群7名に分類した。設定課題は,運動課題のみの単課題条件および運動課題中に認知課題を課す二重課題条件の2通りとした。運動課題は,対象者自身の快適歩行で9?歩行路の中間地点に設置された高さ2?,幅15?,奥行き80?の木製障害物の跨ぎ動作とした。 認知課題は,100から7を減じていく連続7減算とした。計測項目は,歩行開始4歩目および障害物を跨ぐ直前の歩行速度,歩幅,歩隔の3項目とした。二元配置分散分析の結果,非転倒経験群では,歩幅が歩行状態と歩隔が歩行条件で主効果が認められたが,転倒経験群では認められなかった。本結果から非転倒経験群と転倒経験群の障害物跨ぎの際の歩行調節が異なる可能性が示唆された。