2020 年 10 巻 3 号 p. 111-115
本研究は,股関節開排筋力および大腿四頭筋筋力について,膝関節痛の影響を検討することにより,股関節開排筋力の臨床的有用性を明らかにすることを目的とした。対象を地域在住の女性高齢者227名(平均年齢74.1±5.7歳)とし,膝関節痛無し群182名と膝関節痛有り群45名の2群に分けた。測定項目は,股関節開排筋力,大腿四頭筋筋力,足趾把持力,握力,上体起こし回数,30秒間椅子立ち上がりテスト(30-second chair-stand test:CS-30),TimedUp&Gotest(TUG),5m最速歩行時間(5m maximum walking test:5 MWT),身体組成(筋肉量,骨格筋量,下肢筋肉量)とした。股関節開排筋力は膝関節痛の有無にかかわらず,すべての身体機能との間に有意な相関を認めた。大腿四頭筋筋力は,膝関節痛が無い場合はすべての身体機能との間に有意な相関を認めたが,膝関節痛の高齢者ではTUG および5MWT との間に有意な相関を認めなかった。膝関節痛を有する高齢者において,股関節開排筋力は大腿四頭筋筋力より動的立位バランスや歩行能力を反映する有用な筋力評価であることが示唆された。