2021 年 11 巻 3 号 p. 117-121
本研究は,ノーリフティングケアの普及を促進させるための方略を検討する目的で,12の社会福祉施設を対象に行われた調査から,介護職員の腰痛と福祉用具の導入割合との関連を検討した。介護職員の腰痛発生率は,対象施設のうち7施設で半数を超え,最も多い施設では85%に及んだ。移乗介助用福祉用具の導入率は,スライディングボードとスライディングシートは高いがリフトは低かった。相関分析の結果,介護職員の腰痛発生率と有意な相関が認められたのは,入所者の要介護度,リクライニング車椅子とリフトの割合であり,その他の入所者に対する介護職員の割合,介護職員の年齢や性別,跳ね上げ式車椅子・スライディングボード・スライディングシートの割合とは有意な相関は認められなかった。今回の結果から,スライディングボードやスライディングシートの適用範囲や適切な使用方法について,介護職員に対する指導の必要性が示唆された。