本研究では,椅子立ち上がり(sit-to-stand:STS)動作を用いた反応時間測定の信頼性と妥当性および地面反力との関連性を検討することを目的とした。被験者は健常な若年女性42名(20.6±0.8歳)を対象とした。敏捷性の測定では,全身反応時間およびSTS 反応時間を評価した。STS 動作時の地面反力測定では,最大値体重比および地面反力立ち上がり率,足圧中心移動距離について評価した。その結果,STS 反応時間測定の級内相関係数(Intraclass correlation coefficient:ICC)は高く,信頼性が確認された(ICC(1,1)=0.735)。また,STS 反応時間と全身反応時間に有意な関連が示された(r=0.375,P=0.014)。しかし,地面反力との関連をみたところ,すべての地面反力変数と関連はみられなかった。以上のことから,STS 反応時間測定の信頼性および妥当性は確認されたものの,地面反力との関連はみられない可能性が示唆された。
飲酒は,健康寿命損失のリスク要因として報告されており,介護予防の観点からも重要視される生活習慣である。しかしながら,健康に対する飲酒の影響については肯定的な報告も散見され,一致した見解が得られていない。本研究では,地域在住男性高齢者を対象として飲酒頻度を聴取し,飲酒なし群(15名)および飲酒時々群(11名),飲酒毎日群(21名)の3群に分類して身体機能の差異について検討した。3群比較の結果,重心動揺計で測定した外周面積に有意な主効果が認められた。多重比較の結果,飲酒なし群および飲酒時々群と比較して,飲酒毎日群において外周面積が有意に大きかった。毎日の飲酒では立位バランスの低下が認められたが,時々の飲酒であれば,男性高齢者の身体機能に悪影響を及ぼさない可能性が示された。
[目的]本研究は,足趾圧迫力発揮時の大腿・下腿筋の関与を分析するため,下肢筋の筋活動量を測定し,足趾圧迫力との関係を検討した。[対象・方法]健常成人女性18名を対象とした。足関節底屈,背屈時および膝関節屈曲,伸展時の最大随意等尺性収縮の筋活動量を測定し,足趾圧迫力発揮時の前脛骨筋,腓腹筋内側頭,大腿直筋,大腿二頭筋長頭の%IEMG を算出した。得られた各筋の%IEMG と足趾圧迫力との関係についてピアソンの積率相関係数で検討した。[結果]足趾圧迫力発揮時には,下腿筋の%IEMG が19.3 ~25.3%認められた。また,各筋の%IEMG と足趾圧迫力で求めたピアソンの積率相関係数は,前脛骨筋と足趾圧迫力の間にr=0.53(p<0.05),腓腹筋内側頭と足趾圧迫力の間にr=0.51(p<0.05)との間に有意な正の相関関係が認められた。しかし,大腿直筋と大腿二頭筋長頭の%IEMG は,足趾圧迫力と有意な相関は認められなかった。[結語]このことから足趾圧迫力発揮時に下腿筋群は同時収縮を行い,その筋活動量は足趾圧迫力に反映されることが示唆された。
本研究は,ノーリフティングケアの普及を促進させるための方略を検討する目的で,12の社会福祉施設を対象に行われた調査から,介護職員の腰痛と福祉用具の導入割合との関連を検討した。介護職員の腰痛発生率は,対象施設のうち7施設で半数を超え,最も多い施設では85%に及んだ。移乗介助用福祉用具の導入率は,スライディングボードとスライディングシートは高いがリフトは低かった。相関分析の結果,介護職員の腰痛発生率と有意な相関が認められたのは,入所者の要介護度,リクライニング車椅子とリフトの割合であり,その他の入所者に対する介護職員の割合,介護職員の年齢や性別,跳ね上げ式車椅子・スライディングボード・スライディングシートの割合とは有意な相関は認められなかった。今回の結果から,スライディングボードやスライディングシートの適用範囲や適切な使用方法について,介護職員に対する指導の必要性が示唆された。
【目的】本研究では,男女間におけるフレイル要因および身体各部位筋厚の性差を検討した。【方法】対象は要支援1から要介護2までの要支援・要介護男女高齢者37名とし,男性高齢者22名と女性高齢者15名に分類した。フレイルの評価には基本チェックリストを用いた。身体6部位の筋厚に加え,身長,体重,BMI を測定した。【結果】男性高齢者では女性高齢者と比べて閉じこもり傾向にあった。各部位筋厚では男性高齢者に比べて女性高齢者は大腿前部,上腕前部,上腕後部,下腿前部に有意な低値を認めたが,大腿後部と下腿後部の筋厚には性差を認めなかった。【結論】本研究結果より,要支援・要介護高齢者では性差の特徴に応じた介護予防の実践が期待される。
本研究の目的は,軽度の外反母趾のある中高年女性を対象に,母趾外反角軽減シューズが母趾外反角(hallux valgus; HV 角)を軽減できるか否かを検討することである。対象者7名(平均66.3±10.5歳)をX 線撮影した結果,すべての対象者で片側のみに軽度の外反母趾(16.7‐21.9度)が認められ,反対側は正常範囲(8.7‐13.6度)に該当した。裸足・一般靴ソール・開発靴ソールの3条件におけるHV 角を比較した結果,外反母趾側では有意な群間差(F 値=16.18,p<0.01)が認められ,開発靴ソールを履いた場合に,裸足および一般靴ソールよりも有意にHV 角が減少した。非外反母趾側では有意な群間差(F 値=0.41,p=0.67)は認められなかった。これらの結果から,開発シューズのHV 角軽減効果を認めるとともに,HV 角が正常範囲の中高年女性が履いても問題が生じない可能性が示された。
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