抄録
高齢者の通常歩行時の歩幅は「身長-100 cm」の簡易算出式に適合するとされる。本研究の目的は歩幅の簡易算出式の臨床的意義を検証することである。女性高齢者133名を対象に,簡易算出式から算出された歩幅を基準歩幅として,通常歩行時の実測歩幅が基準歩幅未満の歩幅低下群(19名),基準歩幅+10 cm 未満の歩幅微増群(53名),基準歩幅+10 cm 以上の歩幅増加群(61名)の3 群に分類し, 3 群間の身体機能を比較した。その結果,下肢筋力(膝伸展筋力,30秒椅子立ち上がりテスト)は,歩幅増加群に比べ歩幅低下群・微増群で有意に低値であった。また,動的バランス(Timed Up & Go test)は,歩幅微増群と歩幅増加群に比べ歩幅低下群で有意に所要時間が長かった。これらの知見より,実測歩幅が「基準歩幅+10 cm 未満」であることは下肢筋力の低下を,「基準歩幅未満」であることは下肢筋力の低下に加えて動的バランスの低下を判別するスクリーニング指標となることが示唆された。