ヘルスプロモーション理学療法研究
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原著
  • 「身長-100cm」を基準歩幅とした検討
    森 耕平, 村田 伸, 合田 明生, 菊地 雄貴, 満丸 望, 中野 英樹
    2024 年 13 巻 3 号 p. 111-116
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者の通常歩行時の歩幅は「身長-100 cm」の簡易算出式に適合するとされる。本研究の目的は歩幅の簡易算出式の臨床的意義を検証することである。女性高齢者133名を対象に,簡易算出式から算出された歩幅を基準歩幅として,通常歩行時の実測歩幅が基準歩幅未満の歩幅低下群(19名),基準歩幅+10 cm 未満の歩幅微増群(53名),基準歩幅+10 cm 以上の歩幅増加群(61名)の3 群に分類し, 3 群間の身体機能を比較した。その結果,下肢筋力(膝伸展筋力,30秒椅子立ち上がりテスト)は,歩幅増加群に比べ歩幅低下群・微増群で有意に低値であった。また,動的バランス(Timed Up & Go test)は,歩幅微増群と歩幅増加群に比べ歩幅低下群で有意に所要時間が長かった。これらの知見より,実測歩幅が「基準歩幅+10 cm 未満」であることは下肢筋力の低下を,「基準歩幅未満」であることは下肢筋力の低下に加えて動的バランスの低下を判別するスクリーニング指標となることが示唆された。
  • 等々力 賢輔, 甲斐 義浩, 向井 章悟, 村田 伸
    2024 年 13 巻 3 号 p. 117-121
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,日本人膝OA 患者を対象に,大腿脛骨角(FTA)と大腿骨内側上顆間の距離を測定し,大腿骨内側上顆間距離による膝内反アライメントの簡易評価法の妥当性を検討した。対象は,膝OA 患者20名(男性14名,女性6名)とした。大腿骨内側上顆間距離は,直立位における左右の大腿骨内側上顆の距離をノギスで測定し,平均化FTA との関連性を検討した。その結果,平均化FTA と大腿骨内側上顆間距離との間に,有意な極めて高い相関が認められた(r=0.91,p<0.01)。さらに,平均化FTA と大腿骨内側上顆間距離による単回帰分析の結果,得られた回帰式は,平均化FTA=1.405×大腿骨内側上顆間距離+174.944であり,回帰式の調整済みR2は0.81と有意であった(p<0.01)。これらのことから,大腿骨内側上顆間距離は,膝内反アライメントを把握するうえで,有用な評価法であることが示唆された。
  • 坂野 裕也, 村田 伸, 森 耕平, 安彦 鉄平, 堀江 淳, 白岩 加代子, 菊地 雄貴, 中野 英樹
    2024 年 13 巻 3 号 p. 123-129
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,最大一歩幅の予測と実測を併せて行い,筋力やバランス能力,歩行能力との関連から,最大一歩幅の予測値の測定意義を検討した。地域在住女性高齢者100名を対象に,最大一歩幅の予測値および実測値,30秒椅子立ちあがりテスト,膝伸展筋力,片脚立位時間,通常歩行速度を測定し,最大一歩幅とその他の測定項目の相関分析を行った。さらに,最大一歩幅の予測値を従属変数とした重回帰分析を行った。その結果,最大一歩幅の予測値と実測値には強い正の相関を認めた。さらに,最大一歩幅の予測値および実測値は,その他の測定項目全てと有意な正の相関を認めた。重回帰分析の結果,最大一歩幅の予測値と独立して関連する因子として歩行速度が抽出され,歩行速度低下を示す最大一歩幅の予測値のカットオフ値は77.5cm と算出された。これらのことから,最大一歩幅の予測値は歩行能力低下のスクリーニングテストとして活用できることが示唆された。
短報
  • 谷 佳成恵, 津田 彰, 村田 伸
    2024 年 13 巻 3 号 p. 131-142
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル オープンアクセス
    Advanced Trail Making Test(ATMT)は,全般的認知機能低下の判別の有用性が報告されているTrail Making Test の改良版で,信頼性と妥当性は不明である。本研究の目的は第一に,ATMT の信頼性と妥当性の検討,第二に,全般的認知機能低下の判別におけるATMT の有用性の検討とした。再検査信頼性は不十分であったが,妥当性の検討では,脳年齢がすばやさ,脳の元気度,及び有効活用度を総合的に反映する指標で,すばやさが処理速度,脳の元気度が選択的及び持続的注意,有効活用度が視空間ワーキングメモリの指標であることが確認できた。全般的認知機能低下の有無による2 群比較の結果,全般的認知機能低下群が正常群に対して,年齢及び脳年齢は有意に高齢で,すばやさ及び脳の元気度,処理速度では有意な低下が認められた。有意差を認めた項目においてROC曲線を算出した結果,AUC が最も高い値を認めたのは脳年齢であった。脳年齢のカットオフ値は77.5歳で,AUC は89.8%,感度は88.9%,特異度は83.6%であった。ATMTによって測定された脳年齢のカットオフ値が,全般的認知機能低下のスクリーニングとして有用である可能性が示唆された。
活動報告
  • 白岩 加代子, 村田 伸, 合田 明生, 中野 英樹, 菊地 雄貴, 堀江 淳
    2024 年 13 巻 3 号 p. 143-147
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,山間部と平野部で生活する女性高齢者を対象とし,運動機能および生活状況の調査を行った。測定項目は,握力,CS-30,大腿四頭筋筋力,長座体前屈,開眼片脚立位時間,歩行時間,TUG である。その他,閉じこもりや運動習慣の有無について聞き取り調査を行った。その結果,山間部の女性高齢者は,平野部の女性高齢者と比べて,握力,開眼片脚立位時間は有意に高値を示し,大腿四頭筋筋力は,有意に低値を示した。また山間部の女性高齢者は,平野部の女性高齢者より,閉じこもり者の割合が有意に多く,運動習慣有りの割合が有意に低い結果を示した。山間部の女性高齢者では,地形を活用した生活がバランス能力を高めており,外出頻度の低下が下肢筋力に反映していると推測した。本研究結果から,運動機能には地域差がみられることが明らかとなった。異なる地域における高齢者の相違点を把握し,各地域の実情に即した対応策が必要であると考える。
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