抄録
本研究では,山間部と平野部で生活する女性高齢者を対象とし,運動機能および生活状況の調査を行った。測定項目は,握力,CS-30,大腿四頭筋筋力,長座体前屈,開眼片脚立位時間,歩行時間,TUG である。その他,閉じこもりや運動習慣の有無について聞き取り調査を行った。その結果,山間部の女性高齢者は,平野部の女性高齢者と比べて,握力,開眼片脚立位時間は有意に高値を示し,大腿四頭筋筋力は,有意に低値を示した。また山間部の女性高齢者は,平野部の女性高齢者より,閉じこもり者の割合が有意に多く,運動習慣有りの割合が有意に低い結果を示した。山間部の女性高齢者では,地形を活用した生活がバランス能力を高めており,外出頻度の低下が下肢筋力に反映していると推測した。本研究結果から,運動機能には地域差がみられることが明らかとなった。異なる地域における高齢者の相違点を把握し,各地域の実情に即した対応策が必要であると考える。