抄録
Advanced Trail Making Test(ATMT)は,全般的認知機能低下の判別の有用性が報告されているTrail Making Test の改良版で,信頼性と妥当性は不明である。本研究の目的は第一に,ATMT の信頼性と妥当性の検討,第二に,全般的認知機能低下の判別におけるATMT の有用性の検討とした。再検査信頼性は不十分であったが,妥当性の検討では,脳年齢がすばやさ,脳の元気度,及び有効活用度を総合的に反映する指標で,すばやさが処理速度,脳の元気度が選択的及び持続的注意,有効活用度が視空間ワーキングメモリの指標であることが確認できた。全般的認知機能低下の有無による2 群比較の結果,全般的認知機能低下群が正常群に対して,年齢及び脳年齢は有意に高齢で,すばやさ及び脳の元気度,処理速度では有意な低下が認められた。有意差を認めた項目においてROC曲線を算出した結果,AUC が最も高い値を認めたのは脳年齢であった。脳年齢のカットオフ値は77.5歳で,AUC は89.8%,感度は88.9%,特異度は83.6%であった。ATMTによって測定された脳年齢のカットオフ値が,全般的認知機能低下のスクリーニングとして有用である可能性が示唆された。