2025 年 14 巻 3 号 p. 137-144
本研究の目的は,手指屈伸補助装置を使用した動作時の脳波を解析し,動作適応に関連する指標を検討することである。対象は健常若年成人男性8名(年齢22 . 0±6. 2歳)とした。対象者は右手に補助装置を装着し,補助条件と能動条件の2条件下で右手指屈伸動作を実施した。解析では,左前頭前野(F7)と左一次運動野(C3)に該当するチャンネルにおける周波数成分解析およびチャンネル間のコヒーレンス解析を実施した。解析の結果,補助条件においてF7とC3の間でβ帯域のコヒーレンス値が有意に増加した(p<0. 05)。また,能動条件では,F7のβ / θ比とコヒーレンス値の間に有意な負の相関が認められた(p<0. 05)。以上の結果から,手指屈伸補助装置を使用した動作では,初期の適応段階で関連する脳領域間の機能的連結性が増加し,動作が自動化されるにつれてその連結性が減少する可能性が示唆された。