抄録
本研究の目的は,高齢者の歩行能力の評価指標として開発した50ⅿ歩行テストの妥当性を検討することである。健常な地域在住高齢者男性13名(平均71.0歳)を対象に,50 ⅿの所要時間および10ⅿ毎の所要時間(ラップ1~5),5ⅿ歩行時間,大腿四頭筋筋力,30秒椅子立ち上がりテスト(CS‐30),開眼片足立ちテスト,TimedUp&GoTes(tTUG) を測定した。ラップ1とラップ5を除いたラップ2~4までの10ⅿ毎の所要時間を比較した結果,すべてのラップ間に有意な差は認められず歩行時間は安定していた。また,歩行能力と身体機能との関連を分析したところ,50ⅿ歩行テストは大腿四頭筋筋力,CS‐30,開眼片足立ちテスト,TUG と有意な相関が認められた。一方,5ⅿ歩行時間では,CS‐30と開眼片足立ちテストとの間には有意な相関は認められなかった。従来から歩行能力の指標として用いられている5ⅿ歩行時間よりも,50ⅿ歩行テストの方が高齢者の身体機能をより反映することが確認され,歩行能力の評価法として有用であることが示唆された。