本研究の目的は,地域在住の高齢者を対象にQuality of Life(QOL)を総合的に評価し,各種身体機能との関係について検討することである。方法は,地域在住の高齢者145名(男性79名,女性66名)を対象に,主観的健康感,生活満足度,生きがい感,人間関係に対する満足度を評価し,上下肢・体幹筋力,柔軟性,静的バランス,歩行能力,応用歩行能力を評価した。偏相関分析の結果,各種身体機能と有意な相関が認められたのは主観的健康感のみであり,生活満足度,生きがい感,人間関係に対する満足度とは有意な相関が認められなかった。これらの知見から,地域在住高齢者のQOL は各種身体機能に関連がある部分と,関連がない部分があることが示唆された。
本研究は,下肢機能評価である30秒椅子立ち上がりテスト(CS‐30)を測定し,下肢機能の優劣により認知機能の差異が認められるかを性別に検討した。65歳以上の地域在住高齢者220名(男性124名,平均年齢76.3±5.8歳,女性96名,平均年齢75.0±5.4歳)を対象に,CS‐30,Mini-Mental State Examination(MMSE),等尺性膝伸展筋力を測定した。CS‐30の成績から,年代・性別ごとに示された基準値を用いて下肢機能が高い群(高群),中等度の群(中群),低い群(低群)の3群に分類し,それぞれのMMSE,等尺性膝伸展筋力を多重比較検定により比較した。結果,男女ともに低群で等尺性膝伸展筋力が高群よりも有意に低値を示した。また,女性のみ,低群のMMSE が高群よりも有意に低値を示した。このことから,身体機能と認知機能との関連には性差が認められることが明らかとなった。
【目的】iPad アプリケーション「Touch the Numbers」の信頼性と妥当性について検討した。【方法】健常成人34名を対象とした。信頼性の検討には級内相関係数ICC(1,1)と最小可検変化量(MDC)を用いた。また,妥当性の検討はTMT-A との関連から求めたピアソンの積率相関係数から検討した。【結果】ICC=0.66(95%CI:0.42‐0.81),MDC95は6.3秒であった。また,Touch the Numbers とTMT‐A との間に有意な相関(r =0.57,p<0.01)が認められた。【結論】これらの知見から,Touch the Numbers の再現性と妥当性が確認され,注意機能検査として使用できる可能性が示された。