抄録
本研究の目的は地域在住高齢者の不安定面上での姿勢制御能力が転倒に及ぼす影響 を検討することである。地域在住高齢者55名を対象者に,過去1年間の転倒歴を聴取した。 姿勢制御能力の測定は専用のフォームラバーを用いた重心動揺計を使用し,開眼および閉 眼とフォームラバー有無を組み合わせた条件で行った。測定項目は外周面積,実効値面積,単位軌跡長とし,また,各測定項目のロンベルグ率を算出した。いずれの測定項目も転倒 歴に差を認めなかった。転倒群が非転倒群と比べ高い値を示す傾向であったが,ラバー有条件でのロンベルグ率でのみ非転倒群の方が高い値を示した。このことから,重心動揺計を用いた不安定面上での姿勢制御能力は転倒に影響を及ぼしていなかったこと,転倒群は視覚優位の姿勢制御であり非転倒群と比べ下肢の体性感覚が低下している可能性があると考えられた。