抄録
本研究の目的は,地域在住高齢者の転倒と身体・認知・精神機能との関連性について総合的に明らかにすることである。方法は,地域で開催された体力測定会に参加した活動的な高齢者345名を対象に,過去1年間における転倒経験の有無別に身体・認知・精神機能について,年齢と性別を調整した共分散分析で比較した。その結果,2群間を単純に比較すると,年齢,CS‐30,足趾把持力,上体起こし,開眼片脚立位時間,TUG 時間に有意差が認められ,転倒群が非転倒群より有意に年齢は高く身体機能が有意に劣っていた。老研式活動指標,MMSE およびGDS‐5は有意差を認めなかった。ただし,年齢および性別を調整した2群間の比較では,すべての測定項目に有意差が認められなかった。以上から,転倒の危険因子は数多く報告されているが,年齢や性を考慮する必要性が示唆された。また,活動的な高齢者であっても転倒経験に関わらず転倒する可能性が考えられるため,転倒への注意を喚起し,転倒予防事業などの各種取り込みへの参加を促す必要があろう。