2018 年 8 巻 3 号 p. 119-122
本研究では,高齢者の身体機能を想定した条件で,T字杖への軽度の荷重が重心動揺の安定化に寄与するかどうかを検討した。対象は,健常成人17名とした。測定は静止立位(条件A),足底の冷却と高齢者ゴーグルの着用を行った静止立位(条件B),足底の冷却と高齢者ゴーグルの着用を行い,T字杖にて500g 以内の荷重を行った静止立位(条件C)の3条件で行った。重心動揺の計測には重心動揺計を使用し,各条件の実効値面積および重心移動速度を解析項目とした。統計解析には,反復測定分散分析およびBonferroni 法による多重比較を用いて条件間の比較を行った。分析の結果,実効値面積において,条件Aおよび条件Cは,条件Bと比較して有意に低値を示した。重心移動速度においても,条件Aおよび条件Cは,条件Bと比較して有意に低値を示した。T字杖への軽度の荷重により,重心動揺が減少しバランス改善をもたらすことが示唆された。