2019 年 9 巻 2 号 p. 53-58
本研究の目的は,プレサルコペニア高齢者の歩行速度と身体機能および認知機能との関連を検討することである。対象者を正常筋肉量群(48名)とプレサルコペニア群(17名)の2群に分類し,歩行速度(通常・最速)と身体機能(膝伸展筋力,上体起こし,開眼片足立ち時間,長座体前屈距離)および認知機能(Mini-Mental State Examination, Trail making test-Part A; TMT-A)との相関分析を行った。その結果,プレサルコペニア群の通常歩行速度と中程度以上の有意な相関が認められたのは,膝伸展筋力(r=0.51)およびTMT-A(r=-0.52)であり,最速歩行速度では膝伸展筋力(r=0.74),TMT-A(r =-0.66)および開眼片足立ち時間(r=0.56)であった。一方,正常筋肉量群の歩行速度はいずれの項目とも中程度以上の有意な相関は認められなかった。これらの知見より,プレサルコペニア高齢者は正常筋肉量の高齢者に比べ努力性の高い歩行である可能性が示され,下肢筋力,バランス能力および注意機能のわずかな低下をきっかけに歩行能力低下を生じる可能性が示唆された。