抄録
シンテッポウユリを種子親,ヒメサユリを花粉親とした交雑で育成されたユリの新品種‘杜の乙女’,‘杜の精’,‘杜のロマン’の花芽分化と休眠覚醒の時期について調べた.無加温パイプハウス内で栽培した場合,新球根の形成時期は三品種とも親球根の開花直前であった.供試した三品種とも,花芽の分化はヒメサユリと同様に萌芽前の新球根内で開始したが,花芽の分化開始時期は11月1日頃で,ヒメサユリよりも遅かった.供試した三品種の新球根からの萌芽時期はいずれも12月1日頃で,ヒメサユリよりも早かった.供試した三品種には,萌芽前の新球根内で花芽が分化するというヒメサユリの特性と休眠が浅いというシンテッポウユリの特性が導入されていた.新球根を掘り上げて昼温20℃/夜温16℃で育てると,7月3日までに掘り上げた場合に花芽は分化しなかったが,8月1日以降に掘り上げた場合は花芽を分化した.新球根の休眠は浅く,11月1日以降には三品種とも萌芽した.