抄録
M.9ナガノ(ACLSVフリー)とM.9 VF157(ACLSV, ASPV, ASGVフリー)の形態的特性について,生育相が報告されているM.9 FL56(幼若相)とM.9 NAKBT337(過渡相)と比較検討し,M.9ナガノの取り木繁殖性についても検討した.
M.9ナガノとM.9 VF157の1年生枝は,花芽の着生,短かくて太い形状の枝,切り込みの明確でない鈍いきょ歯の葉などの特性が観察され,両系統ともに成熟相の特性を維持していると判断された.一方,M.9 FL56は,細長い枝,とげの発生,明確な鋭い切れ込みのきょ歯の葉などの幼若相の特性が,M.9 NAKBT337は過渡相の特性が観察された.
成熟相の特性を示すM.9ナガノの取り木繁殖では,幼梢期の黄化処理と盛り土処理を組み合わせる取り木法で発根性が向上し,3~5年生の取り木床で発根量の多い台木が1株平均10本程度得られることが明らかとなった.