園芸学研究
Online ISSN : 1880-3571
Print ISSN : 1347-2658
ISSN-L : 1347-2658
1 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
育種・遺伝資源
  • 大井 美知男, 佐藤 靖子
    2002 年 1 巻 4 号 p. 237-240
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    長野県の在来種を含むカブ・ツケナ42品種について形態調査を行った.43調査項目をもとにしたクラスター分析から,7グループに分別され,長野県在来の13品種は,このうちの5グループの中に含まれた.主成分分析においてもクラスター分析とほぼ同様な結果となった.
    二つの分析結果から,長野県在来品種は以下の五つのグループに分類された.
    グループ1:‘源助蕪奈’,‘野沢菜’,‘諏訪紅蕪’,‘木曽菜’,‘稲核菜’,‘吉野蕪’,‘羽広菜’
    グループ2:‘開田蕪’,‘細島蕪’,‘王滝蕪’
    グループ3:‘保平蕪’
    グループ4:‘赤根’
    グループ5:‘雪菜’
    グループ1とグループ2の品種は,長野県に伝播してから著しく分化した品種群であり,グループ3,グループ4,グループ5の品種は,それぞれ近縁な品種が長野県以外の地域にみられ,長野県に伝播後は分化が進まなかったものと推察された.
繁殖・育苗
  • 玉井 浩, 小野 剛史, 小池 洋男, 茂原 泉, 飯島 章彦
    2002 年 1 巻 4 号 p. 241-244
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    M.9ナガノ(ACLSVフリー)とM.9 VF157(ACLSV, ASPV, ASGVフリー)の形態的特性について,生育相が報告されているM.9 FL56(幼若相)とM.9 NAKBT337(過渡相)と比較検討し,M.9ナガノの取り木繁殖性についても検討した.
    M.9ナガノとM.9 VF157の1年生枝は,花芽の着生,短かくて太い形状の枝,切り込みの明確でない鈍いきょ歯の葉などの特性が観察され,両系統ともに成熟相の特性を維持していると判断された.一方,M.9 FL56は,細長い枝,とげの発生,明確な鋭い切れ込みのきょ歯の葉などの幼若相の特性が,M.9 NAKBT337は過渡相の特性が観察された.
    成熟相の特性を示すM.9ナガノの取り木繁殖では,幼梢期の黄化処理と盛り土処理を組み合わせる取り木法で発根性が向上し,3~5年生の取り木床で発根量の多い台木が1株平均10本程度得られることが明らかとなった.
  • 後藤 丹十郎, 藤井 一徳, 元岡 茂治, 小西 国義
    2002 年 1 巻 4 号 p. 245-248
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    熱融着性ポリエステル繊維を用いて固化した培地がセル用の育苗培地として利用できるかを検討するために,ストックおよびキンギョソウを用いて,セル苗の生長および切り花品質に及ぼす影響を調査した.両種とも,発芽勢,発芽率に固化による違いは認められなかった.固化した培地は,根鉢が形成していなくても,培地が崩れなかった.両種とも,移植時苗齢に関わらず,移植時の苗形質には培地の固化による差は認められなかった.切り花品質にも培地の固化による差はほとんどみられなかった.固化培地は土壌に押し込んでも崩れないので植えやすく,根鉢形成以前の若苗移植の方法として有効であった.
土壌管理・施肥・灌水
  • 島 浩二, 後藤 丹十郎, 景山 詳弘
    2002 年 1 巻 4 号 p. 249-254
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    スプレーギクの水耕において開発した窒素施肥基準曲線が,ベンチ栽培にも応用できるどうかを検討した.調整重55 gの切り花を生産するために作成した窒素施肥基準曲線の0.75,1.0,1.25および1.5倍の施肥量(シュート当たりの窒素施肥量は,それぞれ356 mg, 474 mg, 593 mgおよび711 mg)になるようにした4区を設けた.なお,本実験では和歌山県の出荷規格に準じて調整重(切り花を80 cmに調整し,下位葉を基部から20 cm取り除いた後の切り花重)40 g以上の切り花を生産することを目標とした.
    すべての窒素施肥基準曲線区において調整重40 g以上の切り花を約80%の割合で生産でき,商品価値の高い切り花が多く得られた.ただし,生育初期にはすべての施肥曲線区で肥料不足の兆候が観察された.また,0.75倍区では栽培終了時に土壌中に残る窒素はほとんどなかったが,1.0倍以上の施肥区では栽培後期には培地内に窒素の蓄積が認められ,施肥量が増えるにつれてその量は多くなった.
    以上の結果から,水耕で作成した窒素施肥基準曲線をベンチ栽培に用いても商品価値の高い切り花を得られるものと考えられた.0.75倍量の窒素(シュート当たり356 mg)を施すことで土壌中への窒素の残存もほとんどなく,調整重40 gの高品質な切り花を生産できた.ただし,生育初期に肥料不足を起こしているのではないかと考えられたので,今後,曲線の修正を行う必要がある.
  • 太田 勝巳, 岡田 薫, 今﨑 一治, 細木 高志
    2002 年 1 巻 4 号 p. 255-258
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    トマト,ハツカダイコン,サニーレタス,トルコギキョウおよびガーベラを供試して,廃瓦の砂壌土の代替としての使用およびキトサン混用の生育に及ぼす影響について調査・検討した.
    廃瓦区において対照区と大きな差異がみられなかった作目は,トマト,トルコギキョウおよびガーベラであった.一方,廃瓦区で生育が劣った作目はハツカダイコンおよびサニーレタスであった.
    また,廃瓦+1%キトサン区においては,すべての作目で対照区と同等以上の生育を示した.
    以上のことから,数種作目においては廃瓦は砂壌土の代替として利用可能であり,その場合1%のキトサンの混用によりさらに生育が良好になった.
栽培管理・作型
  • 荒川 修, 石川 勝規, 小原 繁, 小野田 和夫, 福田 博之
    2002 年 1 巻 4 号 p. 259-262
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    ギ酸カルシウム剤によるリンゴの摘花効果について,結実に及ぼす影響と作用機作について検討した.ギ酸カルシウム剤の0.33-1%液を満開後に散布した場合,結実率の低下が認められた.ギ酸カルシウム剤は,柱頭に傷害を与え,また,花粉管の伸長を阻害することから,これらのことが結実を阻害する原因と考えられた.処理濃度に関しては,0.5%でも柱頭の傷害と花粉管の伸長阻害が認められたが,安定的な効果と実際の結実率から,1%での散布が効果的であると考えられた.
  • 稲葉 善太郎, 大塚 寿夫
    2002 年 1 巻 4 号 p. 263-267
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    冬期の夜温がキンギョソウの開花特性に及ぼす影響を明らかにするために,摘心栽培および無摘心栽培で検討した.摘心栽培においては,夜温が高いほど‘初春’と‘ライトピンクバタフライII’は第1節以下分枝,‘ヴェルン’では第2節分枝の開花が早まった.採花本数は‘初春’と‘ヴェルン’は夜温16℃で最も多くなり,‘ライトピンクバタフライII’の採花本数には夜温の影響はみられなかった.無摘心栽培の‘ライトピンクバタフライII’では,夜温が高いほど開花が促進された.供試品種に好適な冬期夜温は,‘初春’では6~11℃,‘ライトピンクバタフライII’では11℃,‘ヴェルン’では16℃と考えられた.
  • 田村 史人, 村谷 恵子, 藤井 雄一郎
    2002 年 1 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    夏季せん定と冬季の5~7節せん定を組み合わせた枝管理がブドウ‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’の12月加温作型における生育,果実収量に及ぼす効果を検討した.
    1.収穫後の夏季せん定の有無と新梢生育,果実品質・収量との関係をみると,夏季せん定区は発芽がやや早く,花穂数,収量ともに多かった.しかし,新梢の伸長,開花の早晩,葉色および果実品質には,夏季せん定の効果が認められなかった.
    2.養液栽培樹を用い,夏季せん定を前提とした場合の冬季せん定節位が新梢生育,果実品質・収量に及ぼす影響を5節と1節で比較した.その結果,発芽,開花は5節せん定で明らかに早く,新梢伸長が促進され,葉色値の上昇も早かった.また,新梢当たりの花穂数と収量も多かった.しかし,果実品質はせん定節位により大きな差はなかった.地植えの成木を用いた実験でも,冬季に5~7節でせん定する方が1節せん定に比べ,生育が促進され,正常な花穂数と収量が増加した.
    3.以上の結果,冬季の5~7節せん定と夏季せん定とを組み合わせた枝管理法は12月加温作型アレキの生育改善と生産安定に有効であることが確認された.
発育制御
  • 高野 恵子, 二宮 千登志, 笹岡 伸仁
    2002 年 1 巻 4 号 p. 275-278
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    1.オランダ産‘カサブランカ’の長期凍結貯蔵球を切り花栽培に用いたとき,解凍・芽出し方法の違いが切り花品質に及ぼす影響を明らかにするとともに,定植時期と奇形花や葉の障害発生との関係を調べた.
    2.定植時に2℃では3~4週間,5℃または8℃では2~3週間,12℃では2週間の解凍・芽出し処理を行うと,草丈が長く,花らい数が多く,より重い切り花が得られ切り花品質が向上した.また,このような芽出し処理中に花芽の分化が始まり,花房形成期に達するのが観察された.
    3.9月1日から12月1日まで,半月毎に時期をずらせて12℃で2週間の芽出し処理を行った球根を定植すると,定植時期が遅くなるほど花らい数が減少し,10月中旬以降の定植では奇形花や葉の先端部が壊死する障害葉の発生率が増加した.
    4.11月に芽出し処理した長期凍結貯蔵球の定植時の顕微鏡観察では,花が順に分化しなかったり,葉の先端部が透明化している症状が認められた.この結果から開花時に見られる葉や花らいの奇形化は,芽出し中の花芽分化時に起きていることが明らかとなった.
普及・教育・利用
  • 李 進才, 前澤 重禮, 中野 浩平
    2002 年 1 巻 4 号 p. 279-282
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    本研究ではスーパーオキシド(O2)含量を定量する手法として,O2とヒドロキシルアンモニウムとの反応で生じた亜硝酸イオンを分光学的に定量する方法を検定した.O2とヒドロキシルアンモニウムとの反応を定量的に検討した結果,両者の反応は感度と精度ともに高く,発色も安定であった.色素を多く含む植物組織についても,抽出液をAG1-X8樹脂に通すことで色素を除去し,本定量法を適用することができた.本手法は植物組織中のO2含量の簡便定量法として活用できる可能性が示された.
feedback
Top