園芸学研究
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繁殖・育苗
四季成り性イチゴ品種‘なつあかり’,‘デコルージュ’のランナー発生に及ぼす低温前歴,日長および冷蔵処理の影響
濱野 惠山崎 浩道森下 昌三今田 成雄
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キーワード: 長日, 自然日長
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2011 年 10 巻 2 号 p. 173-181

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抄録

四季成り性イチゴ品種‘なつあかり’,‘デコルージュ’を効率的に増殖するために,ランナー発生に関する諸条件を調べた.両品種において,ランナー発生には1,000時間以上の低温(5℃以下)に遭遇することを要し,低温遭遇後の株が短日条件に置かれた場合には,ランナー発生に必要な低温遭遇時間が長日条件下におかれた場合より長かった.低温遭遇時間が長いほどランナー数は増加する傾向を示し,2,000時間では低温遭遇後に短日条件下に置かれた場合の方が多い傾向がみられた.十分な低温を経た‘なつあかり’越年株は,短日(10時間)条件下でランナー数が少なかった.これに対し,‘デコルージュ’越年苗はむしろ長日(13~16時間日長)でランナー発生数が少なく,供試した四季成り性品種では日長が長くてもランナー数が増加しない場合があることが示された.冷蔵処理(−2℃;約90日間)により自然低温に遭遇するより早期に低温充足してランナー発生を早める試みにおいて,‘なつあかり’では7月採苗苗の方が5月採苗苗よりランナーが多く,‘デコルージュ’でも7月採苗苗のランナー数は5月採苗苗と同等以上で,両品種とも苗数が多く確保できる7月採苗苗を次年度の親株として利用することは,苗の増殖率の面で不利ではなかった.冷蔵処理開始時期については,‘なつあかり’で12月開始,‘デコルージュ’で11および12月開始で7月までの総ランナー数が多かった.

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