抄録
【目的】ホームエクササイズ(以下HOMEex)は転倒予防教室や病院での訓練回数の制約を補う手段等幅広く用いられているが、その効果を具体的に示した報告は少ない。今回、HOMEexによる筋力増強効果を調べるため、大腿四頭筋に対し、PTの徒手抵抗による筋力強化訓練と比較、検討を行い、若干の知見を得たので報告する。
【対象】健常人26名を対象とし、A群(週3回の徒手抵抗での筋力強化群)、B群(週1回の徒手抵抗+週2回のHOMEexでの筋力強化群)とに無作為に分類した。A群:男性5名・女性8名、平均年齢30.5±9.2歳、B群:男性5名・女性8名、平均年齢33.2±8.1歳。
【方法】訓練期間は8週とし、徒手抵抗は、等張性収縮訓練を10RMにて、HOMEexは膝完全伸展位、足関節背屈位、7秒保持のPatella Setting(以下setting)を10回指導した。評価は、最大筋力、CT画像からの断面積(膝蓋骨上縁10cm)を開始時と8週後、さらに低下率を見るため訓練終了の1ヵ月後に測定。CT撮影は被検者の同意のもと、診療放射線技師が実施した。筋力測定は膝屈曲60°での等尺性膝伸展筋力を左右2回測定。平均値をBMIで除した値を最大筋力値とした。また、訓練前後の脈拍、自覚的運動強度(以下RPE)を訓練毎に測定し負荷量の目安とした。統計的手法は、Mann‐WhitneyのU検定、Wilcoxonの符号付順位検定を用い危険率5%以下を有意とした。
【結果】開始時の年齢、BMI比、CT断面積は両群間での有意差は無かった。8週後には両群とも筋力、CT断面積の増加を認め、その1ヵ月後には両群とも有意に低下していた。筋力の増加率は、A群16.8±6.1%、B群18.3±11.6%、低下率はA群3.1±9.6%、B群4.0±4.7%。CT断面積の増加率はA群5.1±2.1%、B群4.1±1.8%、低下率はA群0.9±0.7%、B群0.8±0.5%で、両群間における有意差は双方とも認めなかった。RPE、脈の増加率は、A群12~19、36.2±11.8%、B群では徒手13~20、24.1±4.3%、setting11~19、18.3±9.6%で、RPEでは両群間における有意差は無く、脈の増加率では各群間に有意差が認められた。
【考察】等尺性収縮では6~10秒の収縮時間、RPEでは 11が最大筋力の約60%に相当する。今回、HOMEexでも収縮時間、RPE において60%以上とされる負荷量により、筋力増強効果が得られることが示唆された。脈の増加率は個人差が大きく、今回は負荷量の指標には至らなかった。HOMEexは今回の研究結果からは、有用であると思われるが、患者様に対して実施するには動機付け、継続性の難しさがある。その為、目的、効果を具体化し、それを教育、支援、指導する関わりが重要であると考える。