園芸学研究
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栽培管理・作型
モモ‘清水白桃’の生理的落果に及ぼす果実へのジベレリン処理の影響
福田 文夫今任 公象久保田 尚浩
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2011 年 10 巻 2 号 p. 209-215

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抄録

モモの生理的落果の抑制に対するジベレリン(GA)処理の有効性を検討するため,‘清水白桃’を材料に果実へのGA処理(50 ppm溶液に浸漬)と種子への傷害処理(SI)を組み合わせた実験を行った.果実発育第1期の満開後30日(G30区)または50日(G50区)にGA処理したところ(実験1),G50区はG30区に比べて果実側径の肥大が旺盛となり,核割れ果の発生が多かった.G30区ではみられなかった胚の成長抑制と種皮の褐変が,G50区では認められた.しかしG30,G50区ともに生理的落果の発生を抑制した.無処理区,G30区およびG50区の果実に対し,発育第2期の満開後55日(SI55)および65日(SI65)にSI処理を行った(実験2).その結果,G30 + SI65区とG50 + SI55区では無処理区のSI処理と同様に急速な落果が認められたが,G30 + SI55区とG50 + SI65区では落果が遅れた.次に,果実発育第2期の満開後70日にSI処理した果実(SI70)に対し,その1日後(SI70 + G71)または3日後(SI70 + G73)にGA処理を行った(実験3).SI70区に比べてSI70 + G71区とSI70 + G73区の落果の発生は一時的に抑制され,その効果はSI70 + G73区のほうが高い傾向であった.また,満開後75日における活性型GA含量は,果肉ではSI70 + G71区よりSI70 + G73区で高かったのに対し,種子では両者の間に違いが認められなかった.このことから,種子が傷つけられると果肉のGA含量が低下し,落果抑制効果を持続しなくなると考えられた.以上より,モモ‘清水白桃’において,果実発育第1期後半のGA処理は落果の発生抑制に有効であると考えられた.

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