園芸学研究
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育種・遺伝資源
ノイバラ(Rosa multiflora)の根に含まれるフェノール化合物とバラ根腐病抵抗性との関係
庄 得鳳李 蓮花立松 翼長岡 史祥中野 浩平景山 幸二福井 博一
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2012 年 11 巻 2 号 p. 153-158

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抄録
ノイバラ‘松島3号’(Rosa multiflora ‘Matsushima No. 3’)はバラ根腐病菌(Pythium helicoides)に対して抵抗性を示し,根組織への侵入過程で菌糸伸長が抑制されることが明らかとなっている.組織内への菌糸侵入阻害にはフェノール化合物が関与しており,病原菌の菌糸侵入によってフェノール化合物の加水分解が誘導され,菌糸伸長抑制物質が遊離されるといわれている.そこで本研究では,抵抗性品種‘松島3号’と罹病性のミニチュアローズ品種‘中島91’(R. ‘Nakashima 91’)の根からフェノール化合物を抽出し,抽出物の菌糸伸長抑制効果を検討した.‘松島3号’の根にはP. helicoidesの菌糸伸長を強く抑制する物質が含まれており,この物質は根の中では結合型フェノール化合物(配糖体)として存在し,加水分解されて遊離型となった場合に高い菌糸伸長抑制活性を示した.両品種の抵抗性と罹病性の差は,根に含まれる菌糸伸長抑制物質の量的差異が関係していると考えられた.結合型フェノール抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析結果から,‘松島3号’で10分前後に溶出する物質のピークが‘中島91’のそれの約3倍を示した.このピークの物質を分取し,その菌糸伸長抑制効果を検討した結果,このピークの物質は有意な菌糸抑制効果を示し,これがノイバラのバラ根腐病抵抗性の発現に関係すると考えられた.
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© 2012 園芸学会
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