抄録
ニホンスモモとウメの種間雑種‘李梅’の安定生産に向けた知見を得るため,‘李梅’のS-haplotypeおよび受粉品種について検討した.‘李梅’のS-haplotypeを分析した結果,‘李梅’のS-RNase遺伝子はサイモンスモモおよびウメからそれぞれ由来している可能性が高いと考えられた.サイモンスモモはニホンスモモの近縁種で,ニホンスモモと交雑和合性がある.これらのことから,‘李梅’はウメだけではなくニホンスモモに対しても,S-haplotypeに関わらず,交雑和合性がある可能性が示唆された.実際にウメ,ニホンスモモ,アンズおよびモモ花粉を用い,‘李梅’に人工受粉を行うとウメ,ニホンスモモおよびアンズ花粉では交雑和合性が確認された.特にウメ‘宮口小梅’,アンズ‘平和’は花粉量が多く,花粉稔性が高いうえに,‘李梅’と高い交雑和合性を示したので,人工受粉の花粉親として優れていると考えられた.このため,‘李梅’においてはこれらの花粉を用いて人工受粉を行うことで,安定的に収量が確保できる可能性が示唆された.